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3 同級生じゃない。師匠って呼んでいいですか?
「へぇ…それじゃあかりちゃんはその王子様に恋しちゃってるんだぁ」
「恋とか、そんな恐れ多い…。もっと神聖な気持ちなのよ、私の推しなの、宮田君は…!」
「でも肌汚い子は嫌って言ってるのを自分に当て嵌めて考えるくらいには、本気なんでしょう?」
そう、彼の言葉は胸に刺さったままだ。
このままじゃあ妄想も出来ない。だって肌汚い子は…無理なんだもん。
「…そいつのために努力したいんだ?」
「うん…だから、先生、いや師匠、私が綺麗になるの手伝って!」
身を乗り出して隣の春斗の手を握る。
爪は綺麗に磨いていても、骨張った関節はやっぱり男の人の手だった。
少し気恥ずかしくなって慌てて手を離そうとすると、春斗のもう片手を上に添えられて逃げ場がなくなった。やばい、手汗かきそう。
「いいけど…ヤるなら本気でヤるよ?」
ごくり。思わず喉が鳴ってしまった。
カウンターで手を握り合っている私達を、店主がにまにまして見てる。
頼む。頼むからこっち見んな。
「じゃあ、さっそく…ここじゃ場所が悪いから、移動するわよ」
「お、おう」
さっさと会計して外へ出ようとする春斗を追って、私も慌てて席を立つ。
毎日推しを眺めるだけの変わらない毎日に、変化が訪れた気がした。
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