たった二人の同窓会

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 鈴原さんは手慣れた手つきでワインコルクを引き抜き、グラスに二人分のワインを注ぎ入れた。 「まずは乾杯でもしようか」と聞かれ、私は目だけを上げて「何に?」と聞いた。 「俺たちの未来に、と言うのはどう?」と答えが返ってきて私はため息をついた。 「そんな気になれないわ」 「そっか。じゃぁ話次第で君は乾杯する気になってくるかな。大丈夫、まだ夜ははじまったばかりだよ」  鈴原さんはどこまでも楽しげだ。上機嫌にワインを口にしている。私は……とてもじゃないが飲む気になんてなれない。毒が入っていたら―――?と言う不安もあった。確か…L事件の三番目の被害者の女性は劇薬の農薬で殺された筈。この異常とも言える漂白剤の臭いの中、その確率だってある。だけど鈴原さんは私が疑っている、と言うことに気づいていないのか 「何から話そうか」とワインを飲みながら私の隣に腰かけてきて、私は彼に気づかれない程度、ほんの少しだけ彼との距離をとった。 「最初から全部よ。七年前から起こったL事件の犯人もあなたなの」と聞くと 「そうだよ」と鈴原さんはあっさりと認めた。こうまではっきり言われると驚きを通り越して呆気にとられる。 「何故……何故、彼女たちは犠牲に……?彼女たちが鈴原さんに何かをしたの」  震える声で何とか聞くと 「別に俺に何かした、と言うことじゃないかな。ただ、似ていたんだよ。 君に」  鈴原さんが私を覗きこむようにして真剣なまなざしで私を見つめてきて、私はその視線から目を逸らしたかった……けれど逸らせない、何か強い威力がある。  それは事件に関する興味からじゃない。ただ、この人の奥にある何かとても強い感情を 知りたくなった。
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