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思い出のふたご座流星群を見るために、あの日の彼が用意してくれたように荷物をリュックに詰めて、私は一人で展望台に上る。
二人で初めて行った展望台。
初めて二人で見た思い出のふたご座流星群。
眼下に望む町さえも、星空のように見えた展望台。
初めて手を繋いだ展望台。
初めてキスをした展望台。
彼の大好きだった展望台。
何度もここに二人で来た…
でも、もう彼は隣にいない。
彼が隣に居なくなって、初めて知る空虚な気持ちが、大切だった時間を呼び起こす。
涙が止めどなく溢れる。
私の涙が空に吸い込まれて、星屑になったように、無数の流れ星が暗い夜空を流れて行った。
一人きりで見る流星群は、ただ虚しく夜空を流れて消えた。
流れ星に乗って、私の心も流れて消えてしまいそうで、不安でたまらなくなった。
星降る夜に、私は声を上げて泣いた。
やっぱり彼の隣にいたかった。
こんなに後悔するのなら、手放さなければよかった。
私は自分が楽になるためだけに彼を傷付けて、そして自分も傷付いた。
もう、戻れないだろうか…
もう、手遅れだろうか…
ここは彼の特別な場所だったはずなのに、私はその場所さえも奪ってしまった…
ここに来れば会えるんじゃないかって、自分から手放した気持ちなのに、こんなことを思うのは図々しいだろうか。
今更気付いても遅いかも知れないけど… やっぱり、祐理の隣にいたかった。
あの場所に戻りたい。
今はただそれだけ…
ただ、それだけなの。
完
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