あの日の流星群に思いを馳せる

1/6
前へ
/6ページ
次へ
温かいコーヒーを水筒に入れ、リュックサックにレジャーシートと、そして寝袋とブランケット。 家から歩いて20分程の場所にある展望台を目指す。 緩やかな坂道を上り切った先に、さらに小高い丘があり、階段を30段程上ると展望台に辿り着く。 そんなに高い場所ではないけれど、星を見るなら少しでも高い方が、空に近づけた様な気がするのは子供じみているだろうか... その考えが、たとえ気のせいだとしても、やっぱりこの場所で流星群を見たかった。 彼と二人で、初めて星を見た場所だから。 ーーーーー 私と彼は大学の天文サークルで知り合った。 ある日の観測会。 あれはしし座流星群の観測会だった。 サークルメンバーで大学の屋上に集まっていた。 寒い冬の方が、空気が澄んでいて星を見るには丁度いい。 寒いのは苦手どけど、星空が綺麗に見える、澄んだ夜空を作り出す冬が私は好きだ。 彼と初めて話をした日は、まだ十一月だと言うのに雪が降ってもおかしくないくらい冷え込んでいて、とても澄んだ綺麗な星空の見える夜だったのを覚えている。 その時、彼は私に温かいコーヒーを差し出して「次の流星群は二人で見ない?」と言った。 今まであまり話した事がなかったのに突然の誘い。 戸惑ってしまうけど、無口でいつも何を考えているのかわからない、ミステリアスな夜空の様な彼の事が、少し気になっていたから嬉しかった。 ゆるくパーマのかかった長めの前髪から覗く綺麗な瞳が、私を真っ直ぐに射抜いて、その瞬間、私の心を流れ星のように何かが駆け抜けた。 だからなのか、迷うこともなく反射的に「うん」と答えてしまった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加