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アレク、
アレクサンダー・ミハイロフという男は、ノーブルな感じが漂う穏和な紳士だった。
肩にかかる豊かな金髪、黒目がちな瞳。
カジュアルだが仕立の良い服。
家の主より寛いだ態度。
直感で只者ではないと思った。
師の書斎で、男三人、
スモーキーな香りのするシングルモルトを燻らせ、ゆっくりと会話をする。
時々、アレクから鋭い視線を感じた。
まるで私を見定めてる様な。
軽いノックの後、書斎のドアが開き、奥様が酔い醒ましにコーヒーを持って来てくれた。
その隙間から師の愛犬アフガンハウンドが入ってきた。
思わず
「ふっ!」
笑いが漏れた。
「どうしました?」
二人が?顔で私を見る。
私はアレクの方を見て、
「…失礼ですが、貴方の容姿が、アフガンハウンドに似てる気がして…」
初対面の紳士に、犬に似てるなんて、普段の私なら言わない。
やはり最近どうにかしていると反省し、謝ろうとした時、
「ええ、良く言われます。
性格も似てる様で、手を焼くみたいです」
悠然と笑った。
その笑みに背中がゾクリとした。
2人共、お宅を辞す時
アレクが思い出した様に、コートのポケットから名刺を出した。
「又、2人で飲みましょう」
そう言うと軽く手を上げた。
音もなく黒塗りの車が横付き、彼を乗せ去っていく。
呆気にとられながら、明るい街灯の下で名刺を見れば、老舗ブランドのこの大陸を統括する最高責任者だった。
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