召喚

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召喚

「私は扉を七度叩く  私は勇気を持つ者を喚ぶ  私は力ある者を喚ぶ  私は優しい者を喚ぶ  私は手を差し伸べる者を喚ぶ  私は弱き者を助ける者を喚ぶ  私は叡智持つ者を喚ぶ  私は悪を討つ者を喚ぶ   エルファマルダ神に願い奉る  扉を暫し開け かの者を迎え入れ給え  我らの悲願を打ち払う者よ来たれ  我らに降り注ぐ厄災を払う者来たれ  扉は開かれた  一歩こちらに  舞い来たれ!」  城の一室に詠唱が響き渡る。  77人の乙女の祈り  歴戦の戦士の剣  偉大なる聖職者の杯  危険地域にしか存在しないガルフェル石と危険度Sの石龍の血を混ぜて作ったインクで描いた魔法陣  そして、アルグリ国建国以来の天才魔術師たる私、メルの詠唱  異世界から勇者を召喚出来ない訳が無い。  これ以上無い触媒と環境。これで世界最高の異世界勇者を召喚する事が出来る。  そうすれば、  そうすれば、  そうすれば……………  その後は考えられなかった。  何故なら、魔法陣が次の瞬間赤黒く輝き始め、石造りの部屋だというのに風が吹き荒れ、魔法陣の中心に赤黒い光の中でも特に赤黒い光の塊が現れ、形を成し始めたのだから。  「おぉ……!」  いざという時の為にスタンバイして貰っていた王直属の騎士達が驚きの声を上げる。  「さぁ、異世界の勇者よ!我らが世界に来たまえ!」  私の叫びに呼応するように、光の塊が人の形をした後、風と光が一際強くなり……………視界が真っ赤になった。
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