4月 桜舞う☆心ときめく出逢いの季節 慧都&海都

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4月 桜舞う☆心ときめく出逢いの季節 慧都&海都

 ケイトと小虎  僕の名前は立花慧都(たちばなけいと)。  この春からエスカレーター式の白樫学園高等部へ進学することになりました。  中等部からの生徒たちもたくさん進学するのでメンバーはあまり変わらないんだけど、みんなが言うにはやっぱり高等部は中等部とは全然違うんだって。  僕らが一年生や二年生だった頃に上級生だった人たちがまた高等部でも上級生になるんだけど、中等部の頃とは違ってみんな大人っぽくてかっこいいらしい。  白樫学園は名門校なので、たくさんの有名な家の子供たちやお金持ちがいる。だからみんなオシャレでかっこよくて、なんだか自信に満ち溢れた人が多い。  僕の家ももちろんその中で引けを取らない立派なお家、なんだけど……。  問題なのは、この僕。  背は低いし、食も元々細くて貧弱な体。顔だって鼻も高くないし、髪はくせ毛でくちゃくちゃ。ようするに、すごく不細工。  もちろん、運動神経もよくない。引っ込み思案な性格で人と競えないし、すごくどんくさい。その上ありえないくらい運が悪い。こんな僕だから目立たずに生きたいのに、何かしらありえないトラブルに巻き込まれることが多い。  僕にはお兄ちゃんがいて、その人がまた僕とは全然違って優秀で、現在高等部で生徒会長を務めてるんだって。僕にとって自慢の兄だけど、なんだかとても遠い存在みたいだ。  僕はもうほんと、いじめの標的にならないように、目立たないように地味に高校生活を送れることをただ願ってる。  壊れそうなくらいうるさく鳴ってる心臓に、手がじっとりと嫌な汗で滲んだ。  渡されてたカードキーで部屋のロックを解除した。  荷物はもう届いてる。同室の人はどんな人なんだろう。  中等部では入学するはずだった子が来なくて一人部屋で過ごせた。それは僕にしてはすごく運がよかった。  でも今年からはまたそううまくはいかないだろう。  できれば、あまり人に興味を持たない人だといいな。僕を空気みたいに気にしない人だと。  これから毎日一緒に過ごすのに、僕のことを不快に思う人だったらどうしよう。  勇気を出してドアを開けると一人の男の子がリビングのパソコンに向かって座っていた。ヘッドフォンをしていて僕には気がつかない。  どうしよう、声かけた方がいいよね? そのまま黙って自分の部屋に入るのはすごく感じ悪いよね? でもヘッドフォンをしてるし、僕の小さな声じゃきっと聞こえない。肩を叩くとか、馴れ馴れしいよね。僕に触れられて気持ち悪いって思われたらどうしよう。  心臓が破裂しそうで耳がキンキンして、息苦しくなってきた。  僕が呼吸困難になりそうな時、男の子がふと振り返った。 「わぁっ! びっくりした!!」 「わぁっ…あ、ああの……」  その子の反応に僕も驚いた。  どうしよう! どもっちゃった…初対面から気持ち悪い奴だって思われる…! 「あ、ごめんね。僕がヘッドフォンしてたから気がつかなかったんだよね」  その男の子は、すごく優しい笑顔を見せてくれた。 「僕は滝川虎。ちっちゃいから小虎って呼ばれてるんだ。よろしくね」  滝川虎くんはすっと右手を差し出した。  僕はさっき変な汗をかいちゃった手を慌ててズボンでふいて滝川くんの手に添えた。 「あああ、あの、、たたたた…」  どうしよう、ちゃんと普通にしようと思えば思う程緊張しちゃってうまくしゃべれない…。 「大丈夫? 人見知り? 僕は平気だよ、これから同じ部屋で、友達なんだから。ね、深呼吸してみて」  滝川くんが僕の手を優しく握ってもう片方の手で肩を撫でた。  僕は深く息をすった。  大丈夫、滝川くんは優しいいい子だ。 「…立花、慧都です。よろしく、お願いします」  やっと言えた…。 「ケイト? 君にぴったりだね。ね、ケイトって呼んでもいい?」 「あ、はい」 「やだなーケイト。まだ緊張してるの? 敬語はやめてよ。あ、それとも僕ちょっと馴れ馴れしいかな」 「ううん、そんなこと……」 「よかった。嫌だったら言ってね? 僕ほんとにケイトと仲良くなりたいって思ったから、ちょっと強引だったかなって」  僕はぶんぶんと首を横に降った。 「今日何か予定ある?」 「ううん」 「じゃあ夕食は一緒に食べよ? 食堂行ってみようよ」 「し、食堂…?」  食堂とか苦手だったから今まで部屋で食べてたんだ…。 「あ、もしかして食堂とか嫌い?」「あ、ううん……人が、たくさんで…」 「ああ、人が多いから苦手なの?」 「…うん」  やっぱり、変な子だって思われちゃうかな…。 「僕と一緒だから大丈夫だよ。もしつらくなったら言って? 食事もらって部屋で食べよう」  どうしよう! 滝川くん、なんていい人なんだろう…。  僕の目から思わず涙が零れて慌てて拭った。 「ええっ!? ごめんね、やっぱり強引だった?」  僕はまた首をぶんぶん横に振った。 「違うの……滝川くん、優しくて…嬉しくて…」 「ほんと? よかったー。なんか嫌な思いさせちゃったかと思ったー。優しくないよ、普通だし。それに小虎でいいよ。ね、呼んでみて?」 「こ、小虎、ちゃん…」 「もう友達だよね?」 「うん、ありがとう」  小虎ちゃんが同じ部屋で本当によかった! 気持ち悪いって思われて嫌われないようにしなくちゃ。
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