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入学式
「ケイトー。起きてる?」
新しい制服がうまく着れずにモタモタしている僕に小虎ちゃんが呼びかけた。
「うん、おはよ、小虎ちゃん」
「あれ。ネクタイ結べないの?」
小虎ちゃんはすでにちゃんと制服も着て、髪を無造作にはねさせたりスタイリングしているとこだった。
「うん、中等部はリボンタイだったから…。小虎ちゃんオシャレでかっこいい…」
「ケイトも髪、ワックスつける? ちょっと待って、手洗ってネクタイ結んであげるよ」
「うん、ありがとう」
「あれ、ケイト、シャツのボタンも段違いだよ」
くすくすと小虎ちゃんに笑われて慌ててシャツを見た。
「あっ…あ、僕…鈍くさくて…」
「ううん、なんか可愛い」
小虎ちゃんは笑いながらシャツのボタンを直してネクタイを結んでくれた。
やっぱり小虎ちゃんって優しいなぁ。優しいし可愛いしオシャレだし。
「あの、ありがとう」
「どういたしまして。なんかリンちゃんの気持ちわかっちゃった。ケイトってぎゅうぎゅうに抱きしめたくなるね」
きょとんとする僕を小虎ちゃんがぎゅうっと抱きしめた。
「入学式、大丈夫?」
「う、うん。多分平気」
「パワー注入」
小虎ちゃんはそう言って僕のおでこに柔らかい唇をくっつけた。
「これで大丈夫」
一瞬何がなんだかわからなかったけど、小虎ちゃんの笑顔を見たらなんとなく大丈夫って気がしてきた。
「うん」
「ケイト、笑った!」
「え?」
「ケイトの笑顔、やっと見れた。なんか僕も嬉しくて元気でちゃった。いこ、入学式」
「うん」
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