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きらびやかな人たち
「無理しなくてもまだ先は長いんだし、部屋で食べてもいいよ?」
「う、うん…小虎ちゃんはみんなと食べて」
「やだよ、ケイト一人にするなんて。それとも一人の方がいい? 僕邪魔かな…」
「そ、そんな、ことないよ…。小虎ちゃんは仲良しな人いっぱいいるから、僕と一緒にいるより…」
「ケイトも仲良しになればいいよ。それに僕とはもう仲良しでしょ?」
小虎ちゃんがにっこり笑って僕の両手を包み込むように握った。
「うん…ありがとう」
僕はずっと一人だったから、一人でもいいんだけど、小虎ちゃんまで巻き込むなんて申し訳ないし…。だけどやっぱり昨日のことを思うと胃がきゅーってなっちゃう…。
「とりあえず行こうよ。無理そうなら持って帰ろう? 取りに行くだけでもいいと思うよ」
やっぱり僕は少しも前向きじゃない。小虎ちゃんが言うように、少しずつ慣れればいいんだろうけど、僕には無理な気がする。だけど嫌だなんて言えなくて、小虎ちゃんと食堂に向かった。
食堂は昨日と変わりなくたくさん人がいた。僕はなるべく周りを見ないように俯いた。
メニューを見ていると、突然食堂内がざわめきだした。きっと誰か上級生が来たんだろうと、顔を少し上げると要ちゃんの姿が見えた。
僕の心臓が激しく高鳴った。息が苦しい。
ふと視線を流した要ちゃんの目が一瞬僕で止まった気がした。だけどすぐにふいっと視線を逸らされた。
それを見て僕はまた逃げ出したくなった。僕なんて存在がここにいちゃいけない気がして、小虎ちゃんの手を離して走り出そうとすると、入り口で誰かにぶつかってしまった。
「こんな所で走るんじゃない」
聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには兄の姿があった。
「ごごご、ごめんなさいっ」
「食事、まだすませてないだろ? 食べないといつまでも大きくならないぞ」
兄は僕の頭をぽんと叩いて肩を抱き強引にまたメニューのところへ連れて行った。
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