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「ケイト、大丈夫?」
小虎ちゃんが心配そうに尋ねた。
「友達、できたのか? ケイトの兄のカイトだ」
「あ、同じ部屋の滝川虎です」
兄の差し出した手を緊張気味に小虎ちゃんが握った。周りからはどよめきが聞こえる。
「カイトー。何してんの? って、あーっ小虎!」
背後から元気な声が聞こえ、黒髪の華奢な人が小虎に抱きついた。
「あ、あゆ、む先輩」
「何、かしこまっちゃって。あゆでいいよ」
一瞬戸惑った小虎ちゃんにあゆむ先輩と呼ばれた人はにこにこと笑った。
「あゆ、知り合い?」
兄が言った。
「うん、友達の弟。カイトこそ知り合いなの?」
「いや、今会ったところだ。弟のケイトの友達みたいだ」
「ケイト!?」
あゆむ先輩はキラキラした目で僕を見つめた。
「オレ山田歩、よろしくっ」
歩先輩は満面の笑みで手を差し出した。
「……たたた、立花、ケイトです…」
新しい環境なんだから自己紹介はつき物なんだろうけど僕はやっぱり苦手だ。
「小虎もケイトもあっちで一緒に食べようよ。みんな紹介するし」
「ケイト、大丈夫?」
歩先輩が指を指したのは昨日のテーブルで、やっぱりなんだか目立つ人たちが座っていた。
「ああ、あの、僕…」
「あゆ、ケイトは人がたくさんなの苦手なんだ」
戸惑う僕のかわりに小虎ちゃんが歩先輩に答えてくれた。
「え? そなの? …あ、じゃあカイトに頼めばいいじゃん、例の部屋。カイトはあっこで食べてんでしょ?」
「ああ。余計なトラブルを起こしたくないから。でも…今日だけだぞ、ケイト。いつまでもそんなんじゃダメだ」
「わ、カイトがお兄さんぶってる」
「うるさいな、あゆ」
「じゃあノンとかみんな呼んでくるー」
そう言って歩先輩は元気よくテーブルへ駆け出した。
「えーっと、小虎?」
「はい、あだ名なんです、小さいから」
「そうか。じゃあ二人ともおいで」
兄が案内したのは奥の豪華な扉の向こうにある広い豪華な部屋だった。
僕らの後からリン先輩や竜先輩、歩先輩ともう一人そっくりな人に、更に数人、みんなかっこよかったり可愛かったり目立つ人たちが入ってきた。
「わーここってこんなんだったんだ」
「もう、あゆー。また先輩に無理言ったんじゃないの? でも久しぶりだねーここ」
「まぁまぁ、今日だけだって、なぁ?カイト」
みんなめずらしそうに部屋を見渡しながら席についた。
「ここは専属のウェイターがいるから、メニュー見て頼むといい」
兄が僕の前にメニューを置いて言った。
やっぱり生徒会長ともなると、こんな特別扱いだったりするんだ。
「そういえば要先輩もここで食事されるんですか?」
歩先輩と同じ顔の人が口にした名前にどきっとした。
「いや、VIPルームはいくつかあるんだ。一緒に食事することもあるし、まぁあいつも忙しいだろうから」
その後みんなで食事をした。みんないい人そうなんだけど、やっぱり僕は場違いだな、と思うとちょっと逃げ出したくなったりもした。
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