星の恋人

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星の恋人

 今夜はペルセウス座流星群が見られるとテレビで聞いた。  幸い予報では晴れるらしい。  私は西陽で橙に染まりゆく街中を、車を飛ばして山へ向かう。流星群と共に降りてくる彼と会うためだ。  ある程度山道を登り、見晴らしのいい開けた地点に車を止め、車から降りた。  そして、時間を確認しながら空を一心に見つめ続ける。一瞬でもその瞬間を見逃すまいと、瞬きする間も惜しく、目を見開いたまま待ち続けた。  空が夜の深い藍色に移り変わっていく中で、ようやく待ち望んだその時が訪れる。  雨のように降り注ぎ、一瞬の煌めきを残して次々に消える星の群れを山の草むらの中に寝そべって眺めていると、その星の一つが私の近くに降り立った。  そして、人の形に変わった影は、私の隣に寝そべって手を繋いでくる。  隣を見れば、私の恋人が星の煌めきを宿した輝く眼でこちらを見返し、微笑んだ。 「お待たせ。会いたかったよ」  私は頷き返すと、彼にそっと口付ける。  儚く美しい空の匂いがした。
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