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「お手玉!」
「しょーちゃんは、お手玉が本当に好きだねぇ」
「だって、お手玉たのしいもん! おばあちゃんのお手玉をね、見るのもたのしい!」
即答した少女の手に、臙脂色の小さなお手玉を二つ握らせた。
最近の少女の回答がほとんど同じである為、老婆は事前に用意していたのだ。軽く掴むと、中に入った小豆がぶつかり、心地よい軽い音がする。
少女は二つのお手玉を放る。
老婆は、もうひとまわり大きな藍色のお手玉を四つ、華麗に回す。
「すごい! すごーい! すごーいっ!」
「ふふふ……。そう無邪気に喜んで貰えると、やりがいがあるねぇ」
朗らかに笑いながら、手を止めることなく少女と会話を続ける。
お手玉と会話の二つのことを同時に行う姿を目の当たりにした少女は、興奮の眼差しで老婆を見つめる。
「おばあちゃん本当にすごいね! 何でも出来るんだね!」
「何でもは、出来ないよ。おばあちゃんは、しょーちゃんみたいに走り回るのも難しいからねぇ……」
「しょーちゃんね、いっぱい走れるよ!」
「すごいねぇ。しょーちゃんは、きっとこれから、何でも出来るようになるね」
そんな相槌を打ちながら、老婆は少女と遊んだ。
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