しょーちゃん、磯貝家へ駆ける

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 そして、しばらく経った頃、思い出すように老婆がつぶやいた。  「もうそろそろ、インクも乾いたかねぇ……」  「えー。もう終わり?」  少女は不満を口にするが、老婆は紙に指を滑らせ、インクが付着しないことを確認すると、回覧板を少女に手渡した。  「また、おいで」  「はぁい」  縁側から庭へ飛び出した少女は、回覧板を片手に老婆へ手を振る。  「またね、おばあちゃん!」  「しょーちゃん、またね」  別れの言葉を聞いた少女は、あっという間に獣道に消えた。  その小さな背中が見えなくなるまで、老婆は手を振り続けた。  一方、少女は回覧板を小脇に抱え、山道を駆け下りる。途中にある我が家を通り抜け、更に遠くの家へ向かう。  山道を駆け下りた先にある内村家の前で、先と同じく声を張った。人の気配が無いのを察し、少女はポストに回覧板を差し込む。  これで、今日の任務は完了である。  ふぅ、と息を切らしながら、少女は改めて家路につくのであった。
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