ディナーからの…?

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松下くんと仕事の話をしながら、お酒を楽しんだ。 私は少しずつ飲んでいたつもりだったが、松下のペースにつられて、2杯目を買いにカウンターへ向かった。 彼はすでに3杯目だ。 ビールにもいろいろ種類があり、タップといわれる、蛇口のようなとこからグラスに注がれる。試飲もお願いしたら飲めるので、そういう楽しさもある。 そうだ、松下くんにも教えてなかったな。 そう思い、席に残って飲んでいた松下くんの元に戻り、タップならではの試飲が楽しめることを伝えた。 「最高じゃないですか!おれ試食も試飲も大好きです!」 と彼は残ってたビールを空けて、2人でまたカウンターに向かった。彼はいつも、社内である試食会も張り切っているのを思い出し、松下くんの後ろでひっそりと笑った。 まだ飲んでいなかったビールの試食をし始めた松下くん。カウンターのお兄さんも、とても良い雰囲気の人で、これは結構ビターなんですけど、試してみます?なんて気持ちよく勧めていた。 私は2杯目に、コロナビールを注文した。海外では定番の瓶ビール。そこにカットしたライムを中に落としてもらった。懐かしい味だ。 彼は4杯目になるのか、結局ビターな味わいのギネスビールをオーダーしていた。黒ビールとしても有名だ。 飲みすぎて大丈夫かな、と思ったけどはっきり喋るし言動は平気そう。ギネスもアルコール度数はそんなに高くはなかったはず。 ひとまわり以上歳が離れているけれども、彼との話は尽きることなく、会話をつまみにお酒も楽しく味わった。 コロナビールを飲み終えた所で、やっと時間に目を向けた。あれ、今何時だろうか。 「松下くん、時間、大丈夫?もう24時になるよ。」 私の終電がそろそろまずい。 彼は逆方向だ、大丈夫だろうか。 「えっ、もうそんな時間ですか!やば!今調べます! …終電24時12分、あと12分っす!大丈夫です!」 だいぶギリギリだ。 彼は残っていたギネスを飲み干し、グラスをしっかり空けてから立ち上がった。私も上着をきて準備をする。 店を出て駅へ向かう。 歩き始めて、少し松下くんがヨロヨロしていることに気がついた。 「松下くん、大丈夫?ちゃんと歩ける?帰れる?」 「おれは大丈夫です!歩いてます!  部長こそ実は結構酔ってたりしてますよね?」 「私は2杯だし、そんなに酔ってないよ。大丈夫だよ?」 「へへへへ、気付いてないんですね、部長の敬語がなくなってるんです。嬉しいです!嬉しい!」 そう言われて、私は普通に松下くんと話していることに気がついた。 松下くんの隣は、居心地が良くて、私も自然体になっていたんだろう。そう、それこそ自然に。 「おれ、ずっと小次郎ずるいって思ってたんです。小次郎には部長敬語使わないですよね?だからどうしても小次郎には敵わないって。でも今日は、俺の勝ち!です!」 彼は嬉しそうに私の方を向いてニコニコしてる。 書店まで、小次郎の心配はしていたが、気付いたら私は小次郎のことが頭から離れてしまっていた。 小次郎…大丈夫だろうか。ご飯、ちゃんと食べているだろうか。私は急に心配になって落ち着かない気持ちになってしまった。 「部長、小次郎のこと今思い出して心配になっちゃいました?すみません、こんな遅くまで付き合わせてしまって。 あ、そうだ!おれ、部長独り占めしちゃうお詫びに小次郎へプレゼント買ってきたんですー!だいぶ買うか迷ったんですけどね、これ、缶詰!でも嫌いじゃなければ渡してください!勝者の余裕です!へへへ」 松下くんはカバンから猫缶を取り出して渡してくれた。 彼は今日一日、猫缶を持って外回りしてたのだろうか。 「ふふ、ふふふ。猫缶持ち歩いて仕事してたの?あはは、松下くんって本当に、面白いよね。ありがとう。 明日ね、小次郎に大好物な魚の缶詰あげようって思ってたの。まさか松下くんがくれるとは予想もしてなかったよ。やっぱり、以心伝心しちゃうね。」 私は彼の前で大笑いしてしまった。 そして中々恥ずかしいことを言ってることに、気付いていなかった。 松下くんは目を丸くして、次第に顔が赤くなっていった。
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