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深夜1時半。
最終電車に乗り、駅に着く。
電車の中では2人してほとんど無言。私は少しうとうとしてしまった。
駅についてコンビニに寄る。
誰かが家に来て泊まって行くなんて、滅多にない。なので歯ブラシなど必要なものを買う。
そこから徒歩10分くらい歩き、私の家が見える。
歩いてる途中も、あまり会話はなかった。
「大したおもてなしもできませんが、どうぞお上がりください。」
…こういう時ってなんて言うのが正解なのか。鈍った思考と、分からないけど何故か発生してるお互いの緊張感に飲まれて、ぼんやりしたまま鍵を開ける。
「お邪魔します…。」
彼も同じ心境なのか、いつもの元気が0%だ。
ドアを開けると、中からタタタタッと走る音が、近づいてきた。
私はとりあえずすぐにドアを閉めた。
予想通り小次郎が走ってきたのだが、知らない男の人がいたからか、一定の距離から近くに寄ってこなかった。警戒してる。
松下くんには靴を脱いで上がって貰ったが、少しここで待っていて欲しいと声をかけて謝る。
私は中に進み、逃げてしまった小次郎を追いかける。
「小次郎、ごめんね。遅くなってごめんね。ご飯食べた?足りたかい?」
あまり抱っこをさせてくれない小次郎だが、手を広げると寄ってきたのでそのまま抱きしめる。
小次郎はそのままじっとしており、小さい音でナーン、と鳴いた。
「不安にしちゃったね、寂しかったね、ごめんね。」
頭をぐりぐりと小次郎に押し付けると、小次郎はジタバタし始めたので床に下ろしてあげる。すると彼は安心したのか、置いておいた水を飲み始めた。
私は急いで、新しい水に取り替えてあげた。カリカリのご飯は綺麗になくなっていた。
すると今度は玄関の方でなんとなく情けない声がした。
「小倉部長〜〜大変申し訳ないんですけどトイレお借りしてもいいですか〜〜〜」
小次郎に続き松下くんが、いつもの雰囲気に戻ってきてきたのを感じてほっとする。
「ごめんね、待たせてしまって。廊下突き当たりを右に曲がったところにトイレあるから使って。」
「すみません失礼します!」
さて…と。
平家という建物は名前の通り、平らで、2階はない。
横に広い家で、ちょっとした縁側があるような、そんな家。
祖父が建てたこの家だか、祖父が他界して両親の代となった時、一部屋を除いて床は畳からフローリングにリフォームされた。障子が一部あったけれど、そこも普通の引き戸になって家の雰囲気が少し変わったな、と幼いながらも感じたものだ。
古い家には違いないが、家の中はそこまで、古臭くないはず。そう、それがいいたかった。
「お客様用のふとんがたしかこっちに…。一応毎年気にして干してるから、大丈夫だとは思うんだけど…。」
ガサガサしてるうちに松下くんがリビングの方に来たみたいだ。
一旦リビングのほうに戻り、松下くんに椅子かソファー適当なところに座ってもらう。水をグラスに注ぎ、彼に渡す。
飲み終わってからざっくり2時間くらい経ってるから、きっともう落ち着いてるんだろう。
「とりあえず、私も眠いし、時間も遅いし、寝よっか。お酒抜けてたら、シャワー浴びてもいいけど、どうする?」
「シャワーは浴びたいところですが、大丈夫です、明日すぐ帰りますから。このソファで寝かせていただいても大丈夫ですか?」
いやいやいや、うちのソファそんな大きくないよ。
「松下くん、私は部下にそんなソファで寝かせられないよ。布団引くから、布団で寝てください。あ、先に歯磨きしちゃってください。着替えは用意しておきます。洗面台はトイレの近くにあったのでわかると思います。」
「分かりました、ありがとうございます。」
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