その翌日と恋心

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いつもよりだいぶ遅くに目が覚めた。 朝10時半、だいぶ寝坊助だ。 昨日は凄い濃い1日だったな…。 隣で寝ている彼を見る。 うん、夢じゃない。 彼、松下くんは布団をすっぽり目の上まで被って寝ている。前髪が上にあがり、いつも見ることのないおでこがヒョコっと出ている。可愛いらしい。 よかった、彼もちゃんと眠れてるみたいだ。 起こさないように静かに部屋を出て、リビングへと向かう。 小次郎はとっくに起きていて、お腹が空いたのか足元にやってきた。 「おはよう、小次郎。今ご飯にするね。今日は朝から魚の缶詰たべようか。これ、松下くんからのプレゼントだよ」 缶詰を開けて、小次郎用のお皿に移し替える。 小次郎の尻尾はフリフリしてる。嬉しそうだ。 「はい、どうぞ。昨日はお留守番ありがとうね。誰も取らないから、ゆっくり食べていいんだよ。」 もう私など眼中にないのだろう、数回頭を撫でてその場を離れる。 松下くんがいつ起きてくるか分からないけど、 今のうちにシャワーを浴びることにした。 …朝早く帰るって言ってたけど、もう早くもないし、少しゆっくりしていくかもしれない。 シャワーを浴びながら、お風呂場の掃除も一緒に行う。家が汚いところは見せたくないものだ。 シャワーから出てリビングに戻り、遅めの朝ごはん、というよりかはお昼ご飯か。とりあえずあるもので作ろうと思う。 飲んだ翌日だし、やっぱり味噌汁とか和食でいいだろうか。 味噌汁の準備をし、米を洗って炊飯器にセットする。 冷凍ご飯も余ってたけど、お客さんには炊き立ての方がいいかな、と。 すると、松下くんが起きてきた。 「おはようございます、松下くん。よく眠れたようで良かったです。もう11時を過ぎていますが予定等は大丈夫ですか?良ければお昼、食べて行きませんか?」 松下くんは目をパチパチしている。 ふふ、起きているのかな、まだ寝てるのかな。 「…部長が風呂上りな姿でキッチンに立ってる……エプロンやばい………これはまだ夢…なの……?」 「松下くん?おーい、起きてますかー?」 少し鼻息が荒い?松下くんに、お風呂を勧めた。 今日は特に予定がなかったみたいで、ぜひご飯も食べたいです!と言ってくれた。 その間に、卵焼きも作る。 私は冷蔵庫の中に白出汁を欠かさない。 料理がそこまで得意ではないけれど、この白出汁を入れると何でも少し美味しくなる魔法の調味料だ。 溶き卵にも白出汁を加え、なんちゃってだし巻き卵だ。 形は歪だが、魔法のおかげでそれなりになるはず。 出来上がったおかずをテーブルに並べ…松下くんに、私の適当な料理を食べさせていいのか、今更ながら不安になってきた。どう見ても質素だ。 苦笑いを浮かべてると松下くんがシャワーから出てきた。 「シャワーありがとうございました。…って、ご飯出来てる!!部長作ってくれたんですか?!凄い…卵焼きまで……おれ、今世界で1番幸せです部長〜〜〜!!」 松下くんは首からかけていたタオルで目を覆って泣き真似していた。そんな、大袈裟な。って思ったが、それでも気持ちは少し浮上した。 「こんな質素なものしか作れなくて申し訳ないです。ご飯がもうすぐ炊けますので、あと少し待ってて下さいね。あ、納豆もありますけど納豆も食べますか?」 「納豆!好きですおれ!いただきます!」 ご飯が炊けたので、お茶碗によそい、テーブルへ並べる。彼はずっと、嬉しそうにニコニコしている。 いただきます、と食べ始めて、私はゆっくり話し始める。 「松下くん、昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。楽しすぎて、時間を忘れてしまい、恥ずかしいかぎりです。」 「おれの方こそですよ、部長!しかも部長の家にまでお世話になって…すみません。でも、こうして部長とご飯また食べれて嬉しいです!しかも手作り!!」 松下くんは自炊がからっきしだそうで、中学校のときの調理実習が最後に頑張った記憶だそうだ。 コンビニか、外食か、頑張っても卵かけご飯とか、カップラーメンしかできないとのこと。
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