ディナーからの…?

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定時になり、私はふと今日どのように会社を出たらいいのか、ということに気付いた。 松下くんに声かけて、一緒に退勤したらいいのか。 それとも先にでて、適当に時間潰してる方が気を遣わなくていいの…か? 仕事の終わりなんて時間ぴったり合わせられるものじゃない。今どうする?って聞きに行っても良いが、なんか少し恥ずかしいような気持ちがある。 悩んだ末に、おれはこっそり携帯に連絡をした。 " お疲れ様です。今日は何時ごろに上がれそうですか? 私は18時半頃に会社を出ようと思います。時間を潰していますので、終わったら連絡してください。無理して急がなくて良いですからね。それではまた。" 送信すると、当たり前だが松下くんの携帯がブブッと鳴った。 松下くんはチラッと表示をみた後、すぐ中を確認していた。ふふ、にやけてる。こういう反応が素直で可愛いなと思ってしまう。私も歳をとっているからかな。 「 なに、松下。あんた彼女でも出来たの?にやにやして。いつ?どんな子?かわいい子?」 「えっ、おま、彼女出来たのかよ!抜け駆けずる!そう言うのは、ちゃんと報告しろよ!自慢していいんだせ!なあ!」 長澤さんからのツッコミで、松下くんが座ってるデスク周りが何やら盛り上がっている。 彼女じゃないっすよ!ちがいますから!! なんてリアクションしてる松下くんだけど、鼻の下が伸びている。ふふふ、それじゃ勘違いされても仕方ないかもしれないですね。 絡まれてなかなか返事が来ないまま、30分になったので私は帰る用意をする。 「皆さん、仕事が終わったら退勤してくださいね。松下くんも浮かれ過ぎないように。私はお先に失礼しますね。良い週末を。」 「「お疲れ様ですー!」」 …私も困ってる松下くんを見てもからかいたくなってしまいました。彼は目を丸くさせてて、面白かったな、と自然と口角があがる。 さて、どこに行こうかな。 とりあえず駅の方角へと足を進める。 駅ビルに書店があるので、そこで時間を潰してもいいかもしれない。 あまり読む癖はないけれど、面白そうなのがあれば買ってみてもいいかもしれないな。 書店につき店内を見て回っていると携帯が鳴った。 「はい、小倉です。」 「松下です、お疲れ様です!遅くなってしまってすみません、今会社出ましたがどちらにいらっしゃいますか?」 「駅ビルの本屋にいます。松下くん、何食べたいですか?」 「本屋さんですね、今向かいますのでもう少し待っててください!おれは肉が食べたい気分です!」 こういう時、松下くんは何が食べたいとか、言ってくれるので私はとても有難い。何でもいい、と本心で思っているのだけど、そのセリフを言い過ぎてる自覚はあって、こういう時私は中々言葉が出なくなってしまっている。 "…忠裕さんはいつも何でもいい、任せるよ、好きなのでいいよ、とかそればっかり。優しいのか、投げやりなのか。一緒にいて楽しい?" 昔の彼女に言われた言葉は、引きずってるわけでもないけど消えるわけでもないのだ。 松下くんはそろそろ着くのでとりあえず、一旦切りますね、といい電話を終わりにした。 私はちょうど目に付き、手にとっていた  "どんな猫とも仲良くなれる?!猫好き必見、猫の仕草を見破るマル秘本" に視線を戻す。 これは興味がある…買うか買わないか… 私は小次郎について分かってきたこともあるが、飼育面で慣れてないことも多い。今朝もご飯を多く用意して出てきたが、本当にそれが良かったのだろうか。 休みの日も長く家にいることが多く、自動給水器といった便利グッズが世の中あることも知っているが買ったことはない。 今の、小次郎との関係は悪くないと思うけれど、猫の勉強をして小次郎に向き合うべきなのだろうか。 表紙を手にとって悩んでいると、お疲れ様です、との声がかかる。松下くんがそこに来ていた。 「お疲れ様です、松下くん。ここまで来ていただきありがとうございます。お腹空きましたね、どこに行きましょうか。」 「こちらこそ待たせてしまってすみません!部長………その本買うんですか?」 「え?ああ、この本。なかなか魅力的なキャッチワードですよね。少し悩んでいたんです、買うか買わないか。でもタイムアップですね、松下くんが来るまでに買えなかったということは、買わないでやめておきます。」 私はそっと棚に戻した。欲しいと思ったら買えはいい。悩むということは、そういうことなんだって。何かを決断することが苦手な私は、色々理由をつけて割り切ることで判断したりしてしまう。 今日は棚に戻したけど、それで数日心残りがするなら買いに行けばいい。そう思うのだ。 「……小次郎はやっぱり1番のライバルだ…勝てないのか…」
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