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太一は静かに旅立った。 奈湖は太一の遺した機材を使って、星空の写真も撮るようになった。 一人で山に登り、機材をセッティングして、夜空を撮る。 煌めく星空と太一は、奈湖の中ではワンセットなのだ。 奈湖はずっと仕事を続けている。 写真にも、文章にもオファーはあるので、打ち合わせにも出かける。 カフェで打ち合わせのために手帳を開くと、ひらり、と挟んであった写真が舞う。 太一が撮った、初めて一緒に山に登って撮った空の写真だ。 『ねえ?奈湖、俺の希望、分かる?』 『希望?なぁに?』 『奈湖が幸せだなぁって、思ってくれるのがいちばん嬉しい。あの時、俺が君の立場だったら、って言っただろう?俺も同じ言葉を返すよ。奈湖が俺の立場なら?俺の幸せを願うだろう?』 もう、言葉を発するのもやっとだった太一が、ゆっくりと奈湖に伝えた言葉。 ──幸せ、だよ?今でも。 星空を見ていると、太一のことを思うのだ。 『その光が何百年前のものだ、なんて、気が遠くなる。』 『じゃあ、もしかしたら、今見えているこの星とか、今はないかもしれないの?』 あの時の会話。 たった今はもしかしたら、ないかもしれなくても、確実にあって、それは、輝いていた。 そして、光を届けている。 それは間違いのないことだから。            END
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