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けれど、秋になっても食欲不振は続いて。 「仕事、忙しすぎるのかなぁ。」 「もう少し、抑える?」 なんて、話をしていて、冬に入る少し前のことだ。 太一が胃の調子が悪いかも知れないから、病院に行ってくる、と出掛けた。 そして、病院にいる太一から連絡があったのだ。 『家族に、来てもらって下さいって、先生が。奈湖、来れる?』 「すぐ行く。」 病院に着くと、太一とは別で奈湖が呼ばれた。 「どうぞ、座ってください。」 そう言われて、奈湖は診療室の黒い丸い椅子に座った。 「スキルス胃がん、ってご存知ですか?」 医師が密やかにそう言った。 「え?主人はガンって、ことですか?」 急に告げられたその言葉を、飲み込むことが出来ずに、頭の中がくらくらとするのを何とか、落ち着かせる。 「手術とかするってことですか?」 医師は首を横に振る。 「スキルス胃がんは、他のがんとは違います。他のガンは実は若い方には、あまり発症しません。けれど、スキルス胃がんは違います。20代でも罹患します。そして、進行が早いんです…」 単に、手術の同意で呼ばれた訳ではなかった。 「ご主人は…、ステージ4です。」 「それ…どういう事ですか?」 「奥さん、スキルス胃がんの生存率は非常に低いと言われています。ステージ4は有効な治療法はほとんどない、ステージです。治療目標は、『延命』です。」
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