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2.
「あれ?小島じゃね?」
ちょうど、撮影を終えて、山から降りてきた時、麓で声をかけてきた男性がいたのだ。
当時は小島奈湖だった。
「原田?!うわ!久しぶりだね!」
原田太一は高校の同級生でクラスメイトだ。
野球とかチームスポーツをやっていそうなのに、太一は陸上部だった。
高校の頃、取り憑かれたように本を読んでいた奈湖は、連日、図書室で本を読んで帰るのが日課で。
その図書室からは、グラウンドが見える。
同じクラスだし、名前も知ってはいたけれど、明るくてクラスでも人気者だった彼との接点はなかった。
けれどたまに、図書室の窓から彼が練習している姿を見るのは好きだった。
何度もトラックを走っているその姿を見て、何を考えて走っているのだろう、と思って。
その日はたった1人、太一は靴箱の前にいた。
帰ろうとしていた奈湖に
「小島、今帰り?」
と話しかけてきたのだ。
今まで接点がなかったから、急に話しかけられて驚いたものだった。
「うん。原田は部活終わったの?」
「そう。小島も?」
「ううん。図書室にいたの。」
「図書室?」
その時の太一の顔は眉間にシワが寄り、図書室を初めて聞いた人のような顔をしていた。
思わず笑ってしまった奈湖だ。
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