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「そんな顔しなくても図書室は取って食ったりしないよ。」
「お前、俺が図書室に縁のあるような人間だと思う?」
「ないか…。」
「ねえよ。小島は本が好きなんだな、そういえば、休憩時間も誰とも話さずに本を読んでいる時があるな。」
「夢中になっちゃうと、どうしてもねー。」
「そのくせ、みんなに頼りにされてるし。」
「原田こそ、いつも人に囲まれているじゃない。」
「ま、人気者だからね、俺。」
「そうそう、ホント、その通り。」
原田と親しく話したのは、高校生の時はその時くらいだったような気がする。
少し、日の落ちかけた学校の、まだ、ほんのりと暑さの残る時期だった。
それからも、特に接点はなかったし、甘酸っぱいような青春のナニカ的なことが起こったわけでもない。
ただ、話しただけ。
けれど、彼と話すのは違和感がなくて、居心地の良い空気感だったことは覚えていた。
その、太一と、偶然山で会ったのだ。
お互いに大きなカメラバッグ。
「小島、何してんの?」
「降りてきたところよ。いろいろ撮って。原田こそ、今からどうするの?」
「俺はこれから登る。星空を撮ってるんだ。」
「星空!え?!見たい!」
「一緒に行く?俺もお前の写真とか、見たいし。」
行きたいが、奈湖は降りてきたばかりだ。
さすがに、再度山を登るような体力はない。
「降りてきたばかりだもの…。」
「だよなー…、じゃ、連絡先、交換な!今度、一緒に行こう。行く時、声かける。」
その場で連絡先を交換し合って、やり取りを何度か繰り返した。
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