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お互いに忙しくて、時間を合わせるのは難しかったけれど、奈湖は太一の撮影に着いて行く機会ができた。 太一のポートレートは好評で、プロの写真家である事を知った。 太一も、奈湖が連載を持っていることも知って、それをチェックしてくれていたようだ。 当日、マンションの前まで車で迎えに来てくれた太一の車は、大きめのSUVで、後部座席は機材と何やら荷物がいっぱいだ。 「ごちゃごちゃしてて、悪いな。車中泊することもあるから、その荷物も乗っているんだ。」 「すごい。どこまででも行けそうだね。」 「そうだな。どこまででも行けるよ。なんだ?その女子っぽくない感想!」 「女子っぽ…?て?」 「普通の女子は嫌がるよ。車中泊って、ホームレスじゃないんだからって、言われたこともある。」 「ひどいな、それ。」 奈湖は自身も山に登るので、そんな風には思えない。 むしろ、どこまででも、行きたいところに行ける、この環境が羨ましいと思った。 奈湖は免許はあるけれど、車は持っていない。 「撮影には不便じゃね?」 「んー、私のは昼間に撮ることが多いし、山だけってわけでもないからね。街中でも、カメラさえあれば、ってところはあるかなぁ。」 「ああ、下町の路地の写真とか見た!あーゆーの、すげーいいよな。俺、お前の写真好きだわ。なんか、見ててほっこりする、というか…」 「それ、よく言われるよ。」 うんうん、分かる分かる、と運転しながら太一は頷いている。
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