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──好きだわ…か。 その、さらりと発せられた言葉は、単に感想で深い意味はないと分かっているけれど、それでも、奈湖はどきん、とする。 「私も原田の写真、好き。なんと言うか、クリアな空気感が。」 「時折、シャープ過ぎる、と言われるな。」 「目で見るのと、ファインダーを通して見るのは違うんだよね。」 「そうそう、さらにそれをプリントすると、現場で確認していても、違うものが出てきたりする。」 「そして、文章を加えて、印刷にかけるとまた、さらに、えー?!ってなったりするからね。」 「俺、まだその経験はそんなにない。小島のが先輩だな!」 「え?!違うって、私、この仕事始める前は出版社で、本の編集していたんだよ!だから、だって。」 「編集かぁ!小島、本好きだったもんな。」 太一との話は、止めどなくて、ドライブ中も、山に登っている時も、登ってからも楽しくて、あっという間に時間が過ぎていくのが惜しいくらいだった。 太一が何度もロケハンした、という場所は星空を撮影するだけのことはあり、足元も見えないくらい暗い。 今回はまだ道があるだけマシなんだぞ、と太一は笑っていた。 奈湖がいるから、気を使ってくれたことは間違いないんだろう。 カメラのセッティングを終えて、後は待とう、と言う太一の声を聞いて、太一が用意してくれたシートに座って、奈湖は空を見上げた。 まるで星が降ってきそうだ。 「星が…降ってきそうね…。」 「今日は撮影日和、だな。月がなくて、空気が澄んでる。」 「良かった。」 「ん?」 「だって、天気が悪いと星は見えないんでしょう?」 「うん。曇っていても好ましくはないかな。そうなったら、なったで敢えて雲を入れて撮る手法もあるけど、やはり星を綺麗に撮りたい、が一番だからな。」 「こんなにたくさん、本当に数え切れないほどの星があるなんて、信じられない。本当にあるものなのかなって、思っちゃうよね。」
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