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「さらに、その光が何百年前のものだ、なんて、気が遠くなるよな。」 「じゃあ、もしかしたら、今見えているこの星とか、今はないかもしれないの?」 たった今は、もしかしたら、ないかも知れない。 そう思うと、奈湖になんとも言えない心細さが込み上げる。 「そうだな。おい、奈湖、口開いてるぞ。」 あまりにも自然で、さり気なかったので、聞き逃してしまうところだった。 今、名前、呼んだよね。 奈湖の後ろに座った太一が、奈湖を後ろから抱きしめる。 膝の中に、すっぽり入ってしまうようなその姿勢に、奈湖はどうしたら良いのか分からなかった。 「奈湖…、好きだ。」 奈湖は言葉をなくす。 こんな場所で、こんなタイミングで言うのは、ズルくないだろうか。 「言っておくけど、昨日、今日の気持ちじゃないから。」 驚いて振り向いた奈湖の目に入ったのは、落ち着いていると思った太一の照れて、困ったような表情だった。 「どういうこと?」 「お前、よく図書室からグラウンド見てただろ。」 「それ、高校生の時の話だよ。」 「だから、その時からだよ。」 「グラウンド、見てた。」 「俺はお前がこっち見てる時、すげー意識してた。」 あははっ!と奈湖は笑う。 ──何を考えて走っているのだろう? そう思っていたのに、まさか、奈湖の事を考えていたとは。
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