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「なんで、笑うんだよ。」
「…だって、あの頃、原田はすごく人気があって、陸上でもいい選手で。何考えて走っているのかなぁって、私は思っていたのに。」
「高校生男子なんて、そんなもんだぞ。」
「風になりたい、みたいなカッコイイ理由かと思っていたから。」
「好きな子に振り向いて貰いたいのに、声をかけることも出来なかった青春だった。」
「意外だなぁ。」
「小島なんですけど。」
「ん?」
「だから、その声をかけたくてもかけられなかった相手は小島だよ。」
奈湖を膝に抱えて、頭に顎を乗せてそんなことを言う。
もう、今、こんなタイミングで…。
「奈湖と連絡先交換出来て、嬉しかった。けど、それ以上に気が合うなって、思った。一緒にいて楽しいし、分かり合えるし。こんな人とはもう出会えないと思う。だから、結婚を前提に俺と付きあおう?」
「このタイミングって、ズルいよ。」
「こんな?」
「そうだよ。こんなに綺麗な星空の下で、まるでこの世に2人しかいないみたいな、こんな中で、そんなのは、ズルいです。」
「本当に2人きりだったら、いいけど、困るよなぁ。」
「何もかも自給自足は無理だよねぇ。」
「ロマンがねぇなぁ…。」
奈湖が、うふふっと笑う。
「こんな所で告白しちゃうような人は、とってもロマンティストだと思うよ。」
「答えは?」
「よろしくお願いします。」
それは、自然に出た言葉だった。
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