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3.
太一との交際期間はとても短かった。
それは、直ぐに籍を入れてしまったから。
告白から程ない流星群が来ている日、一緒に来てくれ、と言う太一と一緒に山に行き、星が降る中でプロポーズされたのだ。
奈湖にとっても、太一は一緒にいて、心地良く、気が合って、お互いに気を使い過ぎる必要のない相手で、それでいて互いがとても愛しくて、確かにこんな人とは出逢えないかも、と思うような人だった。
フリーランスクリエイター同士の結婚で、時間が合わないことも多かったけれど、お互いの大変さは、お互いがいちばんよく分かっている。
結婚してすぐに、太一の写真が認められてポートレート集として、出版されることになった。
奈湖はとても嬉しかったけれど、太一が言いにくそうに、奈湖に文章をつけて欲しい、と言った時には、思わず泣いてしまった。
『夫婦だから、とかじゃなくて、俺は、奈湖の文章が好きなんだ。俺のポートレートに文章をつけるんだとしたら、奈湖しかいないよ。』
太一が写真を選び、奈湖がそれに、文章を付ける。
「どれもいいんだよなぁ。選びきれない!」
「もー、太一ってば、締切があるんだから、ちゃんと選んで!」
「自分の写真だったらさぁ、これはダメ、とか分かるけど、奈湖の文章、俺好きだからなぁ。切り取るなんて出来ないよ…。」
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