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1 いつもの朝
「剛、いつまで寝てるの? 遅刻するわよ。目覚ましが1時間も鳴りっぱなし」
10分鳴っては10分止まるを正確に繰り返す枕元の目覚ましを、ママは叩いて止めた。
「忘れ物ないわね? 三者面談で『忘れ物が目立ちますぅ。お母様がもう少し気をつけてあげてほしいんですぅ』ってまた先生に言われるの嫌だからね」
ママは担任の口真似をした。
「……」
「朝ごはん作ってあるから食べなさいよ。じゃママ行くからね」
ママはバタバタと階段を降りていった。
「ママの声のほうがよっぽどうるさいよ」
小声で毒づいたのと、ドアがバタンと閉まり鍵を掛ける音が階下から聞こえたのが同時だった。
キッチンのテーブルでは冷えたベーコンエッグと、バターが白く固まったトーストが僕を出迎える。トーストを一口かじった。
まっず……
これまた冷えて膜の張ったミルクティーで無理やり喉に詰まった、油断したら逆流しそうなトーストを流し込んだ。
トレーナーとジーンズに着替えてランドセルを背負う。チラリと時計に目をやると8時30分を指している。また遅刻だ。
はぁ、とため息がでた。
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