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素瀬が素瀬である限り――
それは里人が楽しく笑って過ごせる、そんな素瀬の里である限りの意であろう。
来夏は天へ楽しき音を、
そして瀬衣の好物を届けよう。
―――··*··―――
この夏も瀬衣は天の川から下界を見下ろす。
すでに香々はいない素瀬の里。天女役にはあの日、一命をとりとめた夏佳が舟に乗っている。
夏佳は名を夏佳から夏佳へと変え、瀬衣へ香々の想いを届ける。
川べりにいる里人の楽しそうな笑い声につられ瀬衣の瞳も笑んでいた。瀬衣が、ふふふ、と笑えば口から星砂がこぼれていく。
素瀬では今頃、空を仰いで「今宵も星が降る」と星砂に手を伸ばし笑い合っていることであろう。
〈了〉
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