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――瀬衣
と香々が名前を呼ぶほどにセイは笑い、自身に備わる元々の煌めきを取り戻せば瞳に輝きが浮かんだ。
素瀬の里には元々、降星祭はあったのだが、瀬衣が現れて初めての降星祭では不思議な事が起こったのだった。
瀬衣の瞳が輝く夜空の星星を映すと、投影するかの如く瀬衣の口からこぼれた星が素瀬の川に流れ込み、川すべてを美しい煌きに染めた。
里長も里人もみな揃って驚きに目を見開いていた。中でも特に驚いていたのは天女役を全うしていた香々である。星の煌めきは舟の上をも染めた。さすれば香々自身にも煌めきが纏い、両手で星を掬い上げる。星は砂のようにさらさらと指の隙間から落ちていくのだが、汗ばんだ手の平に残る星砂がいつまでも手を輝かせていた。
川の星は夜が明けるまでずっと輝き、里を明るく照らしていた。舟が川下につくのと夜明けは同時。香々が舟から降りれば星の煌めきは静かに川の底へ沈澱していく。
名残り惜しげに佇む誰もがこの奇跡に感謝し手を合わせていた。
またそんな香々や里人を見る瀬衣の顔も満足気に笑んでいた。
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