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不可思議な降星祭を経験した香々は星砂の残る煌めきの手のまま機に向かう。するとどうだろう。
見た事もない美しい絹織物になっていくではないか。
……そう、
全ては天女の御業などではない。
全てはセイ様の御業ゆえである。
いつしか香々の絹織物は素瀬の里に繁栄をもたらし、里はそれに縋り付いた。あさましくもセイの御業を独占し搾取し、永遠の繁栄を星に頼る。
―――··*··―――
「セイ様、セイ様、どうかお気をお鎮めください。わたくし共が悪う御座いました。セイ様のお力を勝手に搾取していたのは身共で御座います。どうかお許しください。セイ様――」
香々の懸命な呼び掛けに応えるよう、瀬衣の瞳に弱くも光が走る。
「か、あ、さ、ん……」
香々は瀬衣の言葉に嬉しく涙を滲ませながらも首を横に振り、言わなければならない言葉を胸の内で繰り返した。
――香々は母に非ず、セイ様の母に非ず
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