星を拾った日

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琥珀色のパラフィン紙で幾重にもくるまれた星を買った。 不愛想な店主に軽く挨拶をして店を出た。インバネスに湿った空気がまとわりつき、空を見上げると、月が雲に隠れ、星も疎らにしか見えない。不意に肩を叩かれて振り向けば、店主が無言で黒い蝙蝠傘を差し出した。 夜半にさしかかった町は静かで、たまに車が通り過ぎるだけだった。私は周りに人のいないことを確認し、今しがた買った星を取り出した。 包まれている星はランダムで、開けてみるまでわからない。 何度か購入しているが、めあての赤い星だけ当たらない。私はごくりと唾を飲み、そっとパラフィン紙をはがしていった。やがて外気に触れた星が光り始めるのを見て、今度は舌打ちを飲み込んだ。 それは何度も引き当てた、青く輝くスピカだった。乙女を象徴するこの星は人気が高く、スピカばかり集めるコレクターもいると聞く。 しかし私は薄荷の香りが嫌いだし、青白い光は寒々しくて苦手だ。パラフィン紙を丸めて隠しに入れ、スピカを高く放り投げる。それは光を増しながら、ゆっくり空へ上っていったが、雲に隠れて見えなくなった。
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