星を拾った日

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帰り道、通りに置かれたゴミ箱に、隠しに入れたゴミを捨てた。するとゴミ箱の奥底で、ほんのり光るものがある。私は再びあたりに人のいないことを確認し、深呼吸をしてからゴミ箱のなかへ手を入れた。 破れた新聞、マスタードがこびりついたサンドイッチの包み紙、カフェのひしゃげた紙コップ……一日分のゴミをかきわけて、ぐしゃぐしゃに皺のよったパラフィン紙に包まれた光をすくいあげる。不思議な興奮を抑えて紙を開くと、包まれていたのは粉々に砕けたアンタレスの星屑だった。 ああ、これこそ私が欲しかった赤い星。それは砕けてなお美しく、微かにバラのような香りがする。私ならこれで絵を描くし、砂時計にしてもいい。星屑になったとは言え、こんな通りのゴミ箱に捨てるなど愚かなこと――。 そう思ったところで、先刻自分がスピカを空に還したことを思い出した。だれかにとって無価値でも、私にとっては価値がある。その逆も然り。人をとやかく思う必要はなく、自分に忠実であればよい。 星屑を鞄の奥にしまうと、遠くで雷が鳴る音がした。ぬるい雨粒が落ちてきて、店主から借りた傘をさした。内側に、夏の星座図が描かれていた。
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