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お姫さまと王子さま
朝、目が覚めたティアは、「王子さまはキスでお姫さまを目覚めさせるのに、レイフはちっとも分かってない」と、おしゃまな事を言った。
そんなわけで、今日はおままごとの日になった。
バスケットに使わなくなったコップやお皿を入れて、小川の近くで『お嫁さんとお婿さん』をするって連れて行かれた。
「はいどうぞ」と、濡れた砂利を詰めたコップとお皿が用意された。上には葉っぱも飾られている。
「いただきます」と僕はティアのご機嫌を取るのに集中した。田舎にはティアの他に子どもはいるけれど、おままごとに付き合ってくれる事はあまりないみたいだ。
「美味しい? 」
「とても、美味しいよ。ティアはお料理が上手なんだね。良いお嫁さんになれるよ」
丁寧に褒めたつもりなのに、ティアはむくれた。
「レイフって、分かってないわ! 今、お嫁さんをしてるの。もう、良いお嫁さんなの。なれるよって言ったらダメよ」
言葉の端々をよく聞いていて、ティアは幼いのにちょっと賢いみたいだ。僕は笑った。
「ごめんね」
「良いわよ、やり直して」
生意気なティアはとてもかわいい。
「僕はなんてステキなお嫁さんをもらったんだろう。神さまに感謝しなくちゃ。どれも素晴らしく美味しいよ」
これでもかって大げさな台詞を言ったら、ティアはとても喜んで「うふふっ」と笑った。
僕は「レイフはちっとも分かってない」と言われないように細心の注意を払いながら、朝からティアのおままごとに付き合い、午後はティータイムをしてお祖母さまと三人で本を読んだりお絵描きをしたりした。
そして、そんな日が何日か続く。ティアの夢遊病は治ったみたいだった。
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