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「雨、やまないねえ」 「……そうだね」 サーッと細かな音をたてて、雨が降る。 雨に打たれて、街の景色がぼんやりと滲む。 灰色の空はどこまでも続いていて、このまま二度と晴れることは無いのではないかと思わせるような感じがした。 「雨は嫌い?」 「ううん。私は雨、好き」 「……どうして好きなの?」 「雨って、素敵だと思わない?雨音に包まれているとすごく落ち着くの。それに、誰かと一緒にいる時なら、隣に並んで雨宿りできるでしょう?雨宿りできなくなっていいの。一緒に雨に打たれるのでもね。そういう時、世界には自分とその人しかいないような気持ちになって、とても幸せになれる。それにね」 「それに?」 「一緒に虹を待てるでしょ」 「虹?」 「そう。この灰色の空が晴れたら、綺麗な虹が見られるかもしれない」 その人はそういうと、さっきまで目をキラキラさせていたのが嘘のように悲しげに微笑んで、小さく呟いた。 「……一緒に虹を待てる人がいるって、とても幸せなことなんだよ」 雨音が強くなって、水の弾ける音がやけに大きく聞こえてくる。 この人が虹を見られる日は来るのだろうか。 隣で一緒に虹を待てる人は現れるのだろうか。 それまでずっと、ここで雨が止むのを待ち続けるのだろうか。 そんなことって 「……晴れたらいいな」 地面にできた水溜まりには、雨粒が次々と打ち付けて、ひとりうつった孤独な影を滲ませていた。
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