17人が本棚に入れています
本棚に追加
それは都合の良いことだと思っていたが、そのうちにだんだんとつまらなくなってきた。
最初は美味いと思った料理にも、すっかり飽きた。
次から次に買い与えられる宝石も今では色褪せて見えた。
酒ももう最初に飲んだ時のように心地好くはならない。
ヴィクトワールは何かというと私と一緒に人の集まる場所に行きたがった。
幸い、そういう場所では私の片割れの情報を尋ねることも出来たが、残念ながら手掛りとなるような話はまるでみつからなかった。
ここにいても仕方がない…
どうせなら、もっと大きな町で探した方がまだなんとかなるように思えた。
それは、ただべたべたとつきまとうヴィクトワールのことを疎ましく感じるようになっていたせいなのかもしれないが、とにかく、私はその場所を離れたい気持ちでいっぱいになっていた。
私は短い書き置きを残し、金を少しばかり持ち出すと、夜が明けきらないうちにヴィクトワールの屋敷を後にした。
そして、少し離れた所に待たせておいた馬車に乗り込み、私は遠く離れた大きな町を目指すことにした。
(さようなら、ヴィクトワール…)
最初のコメントを投稿しよう!