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「私とそっくりな黒髪の男を見なかったか?」
私は、もう何度、この言葉を口にしたかわからない。
しかし、この数ヵ月というもの、どこへ行っても何一つ手掛りはみつけられなかった。
それも無理からぬこと…
私の探しものはとてもみつかりにくいものなのだから…
「あんたとそっくりな黒い髪の男?
…それは、あんたの双子の兄弟ってことかい?」
「……そうだな。まぁ、そう思ってもらって良かろう…」
「兄貴か弟か?」
「……よくわからん…」
「わからん?
……変わったことを言う奴だなぁ。
変わったといえば…俺は今まで生きてきて、あんたみたいに変わった髪の色をした奴を初めて見たぞ。」
そう言いながら、男は改めて私の髪をまじまじとみつめる。
「そうか……
私の国にはけっこういるのだがな……」
「あんたの国って、どこなんだい?」
「……遥か、遠くだ…」
「へぇ~…そうなのかい。
残念ながら、あんたの探してる男に心当たりはないな。」
「そうか。呼び止めてすまなかったな…」
今までの所、どこへ行ってもこんな調子だった。私も端からすぐにみつかるとは思ってはいない。
しかしながら、毎日毎日同じことを繰り返すのはいいかげん飽々する作業だ。
こんなことをあと何百年…下手をすると何千年、何万年と繰り返さなくてはならないのかと思うと、ぞっとする。
こんな時、人間のように短命であれば…と、おかしなことを考えてしまう。
だが、そんなことを望んでもどうにかなるものでもない…
地道に探し続けるしかないのだ。
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