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『そうそう、あなたにお伝えしておかねばならないことがあります。』
「…なんだ…?」
『地上では、あなたは人間とほとんど変わりがありません。』
「そんなことは今更言われなくてもわかっている…」
『ただ、一つ違うのはあなたには人間よりも時間がずっと長くあるということ…』
「不老不死だということだな…」
『う~ん…「不老」というのは多分間違いないと思いますが…「不死」かどうかはわかりかねます…』
「なんだと?!」
『ですから、あなたかノワール様…つまりもう一人のあなたのどちらかが死ぬようなこともないとは言えない…でも、そんなことになったら…一体、どうなるのでしょうね…?』
この石…
恐ろしいことをサラッと言いすぎだ!
『それから…』
「まだ何かあるのか!?」
『ノワール様とあなた様は必ずしも同じ時代にいるとは限らない…とのことです。』
「何?!」
私の片割れがどこにいるのかわからないだけではなく、いつの時代にいるのかもわからないだと?!
ではどうすれば良いのだ?
『とはいっても、隔たった時間の幅はせいぜい百年だから、たいしたことはない…とのことでした。』
私は返す言葉を失った。
もしかすると、私は体よく天上界から追放されただけなのか?
ドキドキと鼓動が速くなるのを感じ、初めて感じる不安と共にこの賭けがとんでもなく分の悪いものだということを思い知らされた。
いや、そんなことはただの脅しに違いない。
時を飛び越えることなど、無力な人間に出来るはずがないではないか。
創造主もそこまであこぎな真似はしないだろう。
私は自分の言い聞かせるように、そんなことを考えた。
とはいえ、本当にえらいことになってしまった…
私は、創造主とつまらない賭けをしてしまったことを後悔したが、今更どうすることも出来ない。
自分でも、こんなにも早く心が揺らいでしまうとは、思ってもいなかった…
私は自惚れていただけなのか…?
身の程知らずの愚か者だったというのか?
いや、その答えを出すにはまだ早い!
私はまだ地上に降り立ったばかりではないか…
「試練は大きく難問であればある程、燃える」というのが、私の信条だったのだ。
今回だって、乗り越えてみせる!
私を見くびるな!!
天を仰ぎ、私は決意を新たにした。
そう…この時は、まだ強がる気力は十分にあったのだ。
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