第1章…地上へ

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*** 周りの景色が一瞬のうちに変わった。 地上に着いたのだと私は悟った。 特にこれといって何も感じることのないのどかな風景… とりあえず、都会ではないことだけはすぐにわかった。 自分の着ている物にも目を落とす。 これもまた取り立ててなんという事もない服装だ。 少し先に小さな泉があるのが見えた。 ふと、あそこで自分の姿を写して見ようと思い、斜面を降りようとした時、私は何かにつまづき足をくじいてしまった。 (……なんと無様な…) ふだん、こんな風に靴を履き、地面を踏みしめて歩くことなど滅多にない。 だからこそ、こんなことになるのだ。 私は泉に行くのはやめた。 どんな容姿をしていようがさして重要なことではない。 初めて感じる足の痛さに私は思わず顔をしかめる。 最初からツイてないことだな… こんな足で人間のいる町まで歩いていけるのだろうか… そんなことを考えながら、私は道の片隅に座り込み、あたりに広がる景色をぼんやりとみつめていた。 実に退屈な風景だ… たまに動くものといえば、空を飛ぶ小さな鳥と、ゆるやかな風になびく木々… (さて、これから、どうしたものかな…) そういえば、地上では町に着いても金がないと宿屋には泊まれない。 人間の世界では何をするにも金というものが必要なのだ。 無意識に胸のポケットを探ると、そこには小さな革の袋が入っていた。 中には金貨でも入っているのだろうと思ったら、袋から転がり出てきたのは黒い石ころだった。 とても高い値で売れそうには思えない石ころだ。 それとも、こんなものが人間界では価値があるとされているのだろうか…? 私は、石ころを手の平に転がし、まじまじとみつめていた。 『私は石の精霊です。 あなたの小さな力になるよう、創造主様から言いつかっております。』 「石の精霊?」 つまらないことを…こんなものより金貨にしてくれた方がずっと助かるのに… 『そんなことはありません。 私は金貨よりずっとあなたの役に立ちます。 まずは、創造主様からの伝言なのですが…』 黒い石ころは、私の心の中が読めるらしく、勝手にいろんなことを話し始めた。 いや、話すとは言っても私の心の中に直接伝えてくるのだが… 石ころの話によると、私の片割れはどこにいるかわからないだけではなく、同じ時代にいるかどうかもわからないらしい。 創造主も随分と手の混んだことを考えたものだ。 それだけ、私の力を畏れているということか… そう思うと、どこか気分の良いものを感じた。
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