泣いている孫へ

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末尾に氏名と電話番号が記載されていた。  父と母が悩ましげな顔をしながら無言で見つめ合っている。しばしの沈黙の後、父と母がこれでは埒があかないと言わんばかりにいそいそとスマホで情報収集を始めた。  ネットで《桜守景》と検索すると肩すかしするほど簡単に情報が得られた。  景は夫の桜守縁人と日本中を旅しながらボランティア活動をしているようで、SNSにはさらに詳細な内容が記載されている。  中でも景達に救われたという人々からのコメントが印象的だった。 『最愛の娘が病気で死んでしまいました。十四歳になったばかりでした。私はあまりにも悲しくて娘の後を追うことばかり考えていました。でも景さんと出会い、娘に会わせてもらえてとても救われました。どういう原理かはわかりませんが彼女の力は本物です』 『同僚の紹介で原因不明の昏睡から目覚めない患者を見てもらった事がある。彼女が一晩寄り添うと朝には何事もなく目覚め後遺症も残らず退院した。奇跡としか言いようがない』 『私はある事件で酷い目に遭って心がやられちゃいました。でも景さんのおかげで今は元気に学校に通えています。感謝してもしきれないです。もしも迷っている人がいたら差し伸べられたその手を掴めますよう祈ってます』
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