記憶の中で

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記憶の中で

 雷の音が混ざる激しい雨音。  木造でつくられた古い平屋。大好きな君と集めた大好きな本に囲まれた部屋の窓際で、僕はお気に入りのロッキングチェアにゆっくり揺られながら、君のお気に入りだった本を繰り返し読む。  こんなに激しい雨の日はどうしても色々と考えてしまう。  人は死んだら何処にいくのかな。  天国ってあるのかな。よく「天国から見守ってるから」って物語りの人物は言ったりするけれども、ほんとにそんな事ってできるのかな。  輪廻転生はどうだろう。もし、来世があるのなら、もし、来世でもまた君と出会う事が出来るのなら、また一緒に君と生きたいな。今度はもっと長く。  今世の君は逝くのがちょっと早すぎる。早く会いたいよ。  激しい雨は、君が冷たくなって動かなくなった日の天気だから嫌い。とても悲しくて、寂しくて、怖くて。    でも、激しくない穏やかな雨は好きだよ。緩やかな雨は、いつも笑顔の君が思い浮かぶんだ。  暖炉の前で楽しそうに、くるくると表情を変えながら本を読んでいる君。  僕と二人でどちらがより多く庭に干してある洗濯物を取り込んで、より綺麗に畳めるかを競ったり。  どの本に出てきた料理が一番美味しいか二人で研究したり。  雨の日は寒くて凍えそうになるから、ぴったりくっついてギュッと抱きしめて合い、うっすらと頬を染める愛らしい君を見つめながら寝て。たまに見つめ過ぎて怒られてたりして…。そんな些細な幸せを思い出す事ができるから穏やかな雨は好き。 「はぁ…」    目を休ませる為、ため息を吐きながら窓の外を眺める。長時間本を読んでいたから首と目が疲れた。    そういえば、随分と長い間雨が降っている気がする。いつから降っているんだろう。雨が弱くなる事があっても、晴れている庭は長い間見ていない。  昨日、一昨日、半月前。いやもっと前からかもしれない。と言うか、ずーっと外が暗い。  最近僕はよく眠ってしまうし、寝て起きたらちょうど夜ってだけなのかもしれない。  君が居なくなってから料理をするのも楽しくなくて、全然料理しなくなってしまった。腹が減らないし、食べる気もおきない。いつから食べてないのかも正直覚えていない。  でも良いや。これ以上君のいない時間を過ごしたくないし、このままで。  早く、早く会いたいな。僕にとって君は陽だまりなんだ。君に会ってギュッと抱きしめて早く心も体も温まりたい。たくさんお喋りもしたい。声が聴きたい。  僕はまた眠たくなり、椅子に揺られながらそっと目を閉じる。  やっと君に逢えるね…。
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