〜第14回〜訳:入れ歯をくれ〜

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〜第14回〜訳:入れ歯をくれ〜

 ラジオ放送開始15分前。  昨日、ハナちゃんはラジオに来なかった。  今日は来ているのだろうか。ルルは駆け足で放送室に向かう。部屋の前へ着くと一度止まり、ゆっくりと深呼吸をしてから部屋に入る。 「やっほー。ルル(にぃ)。」  ハナはいつもの定位置に座り、いつものようにルルに軽く挨拶をする。 「は、ハナちゃぁあん!もう会えないかと思った〜!」  ルルは安心と嬉しさが込み上げ、涙ぐみながらハナを抱きしめようとする。 「わぁあ!ダメ!ルル(にぃ)。私に触ったら駄目。」  ハナは声を上げて制すると、「で、でも〜。」とルルは駄々をこねる。 「『でも〜。』じゃないの。死にたいの?約束したでしょ。」 「そうだった…。ごめんなさい。」  ルルはハナとの約束を思い出し謝る。   「未遂だから大丈夫よ。元気だして。」  と、ハナは元気づけるように微笑む。 「ハナちゃんは、体大丈夫なの?」 「ちょっと体が変だったから、社長兼神様に診てもらったから大丈夫。ほら、もうラジオ放送始まるよ!切り替えて。」  ハナは真剣な顔付きになる。 「う、うん。大丈夫なら良かった。」  不安な気持ちがなくなったわけでは無いけど、ラジオ放送が始まるのでルルも気持ちを切り替える。    「放送はじまりまーす。3、2、1。」 ルル 「こんばんわ。第14回始まります。『どうぶつ達の本音』のコーナーでございます。MCを努めます。僕、ダックスフンドのルルと。」 ハナ 「私、トイ・プードルとチワワのハーフのハナです。よろしくお願いします。」  J-Popアイドルの恋愛ソングが流れる。 ハナ 「昨日はお休みをして心配をかけてしまってすみませんでした。」 ルル 「本当に心配しましたよ!やっぱり2人でラジオ番組のMC するのが一番楽しい!」 ハナ 「今日も2人で張り切って行きましょう!では早速、今日のお便りを読んでいきますね。動物名、アフリカゾウ。ハンドルネーム、『ゾウじぃ』さんです。」 「こんばんわ。私は御年(おんとし)69歳のしがない老像でございます。  像は一生に5〜6回、使い古して擦り減った奥歯が生え変わります。  私は最後の生え変わりをして、また奥歯が擦り減ってしまいご飯が食べられなくなったので、後は死を待つのみでございます。  最近耳にしたのですが、海に住む『サメ』という種族の方は永遠と全部の歯が生え変わるそうですね。とても驚きました。  そういえば、人間は歯が無くなると入れ歯という物を作ってご飯を食べるそうです。ぜひ像用の入れ歯というのを作ってみてほしいですね。」 ハナ 「というお便りでした。69歳とても長生きですね。」 ルル 「奥歯が5〜6回も生え変わるなんて凄いですね。僕は一回だけでした。」 ハナ 「サメさんも永遠と生え変わるって凄いですね。抜けた歯ってどうしてるんでしょうね?」 ルル 「永遠とだったら、コレクションに置いとくって事がなさそうですね。僕達は人間の家族が見つけては拾いコレクションにして、木の箱に入れて保管してました。」 ハナ 「私達が骨のおやつを隠すみたいな感覚で、集めてるんでしょう。そう考えると、人間も少し可愛いところがありますね。」 ルル 「確かにそうですね。奥歯が無くても食べられる物が出てきて、もっと長生き出来る様になると良いですね。」 ハナ 「『ゾウじぃ』さん。お便りありがとうございました。またお便り楽しみにしております。 『どうぶつ達の本音』のお便りは、どうぶつラジオ局のどうぶつ達の本音係によろしくお願いします。」 ルル/ハナ 「せ〜のっ!もしかしたら、次はアナタのお便りが読まれるかも!どうぶつ達の本音コーナーでした!またね〜」
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