〜第17回〜幻のMC〜

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〜第17回〜幻のMC〜

 ボンッ ツ カッ ツン  ボンッ ツ カッ ツン  ボンッ ツ プスゥ ツーズ  ボンッ ツ プスゥ ツン  と、低い音をリズムに乗せてボイスパーカッションをしながら登場するのは、 「yeah!yeah!yeah!どーもこんばんは!(わたくし)、『幻のMC』こと『DJ-テングー』でございます!」 プォー プォー プォー  「今日は、いつものMC二人は今晩2匹揃ってお休みなので、急遽(きゅうきょ)『DJ-テングー』がラジオをする事になりました!よろしくねん!」 どうぶつ局のスタッフも、フォー!と叫び盛り上がる。ファンが非常に多いMCらしい。涙を流して失神しているスタッフもいる。 「普段は自分の動画サイトでのみ活動をしていますが、ここのラジオ局の社長に声をかけられたら断る事ができません。何故かと言うのは……またこのMCに呼ばれてしまった時お話するとしましょう。」  ブン ツカ ツツカッ   ブン ツカ ツツカッ  また、違うリズムのボイスパーカッションを出し雰囲気を切り替える。  「はい、今日は放送時間内なら何をやっても良いと許可が降りているので自由にしようと思います!」  「まずは知らない人の為に自己紹介から!私はDJですが、機械を(もち)いるDJではありません。ボイスパーカッション、ビートボックスでDJを貫いています。」  「普段は人里の離れた山で生活をしています。私はあの有名な『牛若丸』こと『源義経』を育てた鞍馬の大天狗でございます。」 「堅苦しいイメージがあったでしょう?No!No!私は元々面倒くさがりで、面白そうな事しかやってしない。牛若丸の事だって面白そうだったからやっただけ。あの子は素直な良き弟子でした。楽しかった〜。」  「昔は、よく人間同士で争いがあり『弟子にしてくれ!』と叫びながら山を駆けまわる人間が居たり、迷子になった(わらべ)(たわむ)れ人里に帰したりしていたが、時代は流れ『天狗』は幻の存在と語られるまで平和となり、暇になった。」  ふぅ。と天狗は一呼吸する。  「しかし、最近山でひっさしぶりに迷子になった青年が居て5日間程遊びました。その青年、なんとリズムに合わせて口から様々な音を出すんですね。」  と、言うと天狗はその時青年が出した音を再現する。  それは声を機械音に加工した様な音で、何カ国かの言葉を混ぜて言葉を発して、車のエンジンの様な音、タップダンスの靴で鉄板を踏み鳴らす様な音、服や鞄のチャックを勢いよく開け閉めする様な音などを組み合わせた音楽だった。  「これを初めて聴いた時、衝撃を受けましたね。人間の口から実に様々な音が発せられて、しかも全く別の音が一つの口から2種以上出している様に聞こえるではありませんか!」  「昔は私たちが武術や、学問などを教えたりしていましたが、人間から学びたいと思う事もあるのだと感心しました。」  「もちろん私たち天狗、未だ力は衰えていません。天狗の里に人が立ち入らなくなった分、むしろ前より力をつけています。ですが、たまにはこういった趣向(しゅこう)を楽しむのも良いかもしれません。」  「天狗は人間界の間で幻の存在、私たちの世界では動画サイトでしか姿を見せた活動をしていないですが、超有名になったのである意味幻の存在となりました。」 「長生きしても何にも楽しくないと思っていましたが、長生きして新しい楽しみも増える事もあると思いました。」  ボンッ ツ カッ ツン  ボンッ ツ カッ ツン  ボンッ ツ プスゥ ツーズ  ボンッ ツ プスゥ ツン  「長々とDJになるまでの事を語ったけど、こんな話で良かったかい?近々動画サイトでライブをするから観てくれ!」  「それじゃあ、お腹すいたから帰りまーす。バイバーイ!」 8c593fe2-a859-4c5d-9e97-81ad78563f78    
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