〜社長呼び出し〜

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〜社長呼び出し〜

 時刻は午後11時。  ルルはいつも通り現世での1日を過ごし、体を丸くして寝転ぶ。目を瞑って精神を集中させると僕の意識はどうぶつ局の【お帰りゲート】の下にある。  どうぶつ局に着くと二足歩行が出来る様になる。軽く体を動かし二足歩行に体を慣らしていく。  「よし、今日もお仕事がんばるぞ。」  「……さん。ルルさん!」と足元から声がする。そこには社長のマネージャーであるゴールデンハムスターのハム美さんが飛び跳ねながら何か喋っていた。  「こんばんわ。ハム美さん。どうしました?」    ルルは目線が合う様に伏せをして聞く。  「ふぅ……。ルルさん。社長がお呼びです。今から社長室に案内しますのでついて来て下さい。」    そう言うと、ハム美はハムスター専用の小さい電動スクーターに乗り、ルルの歩くペースに合わせて走り出す。  「わ、わかりました。」  ルルは呼び出される理由に身に覚えがないので、社長に何を言われるのか少し不安になったが、大人しくハム美さんについて行くことにした。  ハム美さんは気まぐれな社長に唯一物怖じせず意見を言う事が出来る動物で、社長兼神様もそれを許している。  体が小さく、クリーム色の艶々の体毛が凄く魅力的だが、仕事に厳しくしっかり者で、社長のマネージャーという事もあり、どうぶつ局の社員は頭が上がらない。  しばらくついて行くと、ルルとハム美は社長室に着いた。  「社長、ルルさんが到着しました。」  「あぁ、入って来て。」  中から社長の返事が聞こえると、「では私は失礼致します。」と言ってハム美さんは電動スクーターで何処かに行ってしまった。  社長室に入ると、ハナちゃんの姿もあった。  「やぁ、ハナもルルも揃ったね。聞くところによるとラジオ局の『どうぶつ達の本音』のコーナーも好評らしいじゃないか。良かった良かった。」  社長は満足そうに頷きながら話す。  「早速だけど、明日は現世の日本では『海の日』というらしい。海に住む伝説と言えば『人魚』だよね〜。だけど〜人魚は動物には入らないから〜。」  ん〜。としばらく唸りながら社長は考える。  「そうだ!代わりに人間達の間で人魚と間違われてる動物に取材に行ってきてよ!」  「取材……ですか?」  ハナは突拍子もない社長の提案に思わず聞き返す。  「そう。しゅ、ざ、い。どんな内容でも面白かったらオッケー!」  「取材の場所に行くにはどうしたら良いのですか?」  ルルは戸惑いながら質問をする。  「ん〜。考えてない。何処でも良いよ。場所は念じればワープ出来るゲート用意するし、翻訳はいつもラジオ局の翻訳担当をしてるモリフクロウの『フッくん』連れて行ってもらって、アポに関しては書類をハム実に頼んでるから大丈夫〜。」  お土産が有れば尚良し。と社長は楽しそうに話す。    「さぁ、行った!行った!朝方には戻ってきてね〜!」  有無も言わさず社長室から出されたルルとハナは、仕方なく急遽取材をしに行くことになった。  「どうする?ルル兄……?」  「どうする?ハナちゃん……?」
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