〜希望の光〜

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〜希望の光〜

 時刻は午後11時20分。  ルルがどうぶつ局に出社してまだ20分しか経っていないのに大変な事になった気がする。  「僕、ラジオの放送室しか分からないから人脈もないし、何処に何があるのかも全く分からない。ごめんハナちゃん。役立たずな兄で……。うっ……。う……。」  ルルは焦りと不安で「くぅーん。くぅーん。」と泣き始める。  「もう。昔からほんとに泣き虫なんだから。ルル兄泣かないで〜。」  社長だけど、それ以前にどうぶつの神様である。神様の言葉は絶対。逆らうとどうなるのか分からないというのもあり、ルルは自分に不甲斐なさを感じ、自分を責めるしかできなかった。  ルルが泣いている姿を見て、「私がしっかりしないと」と意志を固め一生懸命考える。  「海で詳しいどうぶつ。うーん。誰かいたかな……。」  意志を固めたものの、ハナも突拍子のない社長の命令であまり冷静になれていないのか、考えても頭が真っ白のままでいい案が出てこない。  そんな2匹が困って廊下に立ち(すく)んでいると。  ヒタ……ズルズル……。ヒタ、ヒタ……ズルズル。  と、何かを引きずる様な音が暗い廊下の奥の方からゆっくりと近づいてくる。  「な、な、なんの音ぉぉお!?」とルルは驚いて尻もちをつき、更に涙が止まらなくなりしゃくり上げている。  ハナは驚いたが原因を知る為に「どなたかいらっしゃいますかー!」と大声で話しながら音の方へ歩き出す。  「ハナちゃん!?い、行かないで!」と言って追いかけようとするが、腰が抜けていて歩く事ができない。  「大丈夫。ルル兄ちょっと見てくる。ここで待ってて。すぐ戻ってくるから!」  そう言うと、ハナはルルを置き去りにして音のする方へ走って行った。  ……幾ら待ってもハナは戻らない。  「ハナちゃ〜ん。うっ……うっ……。ハナちゃ〜ん。」と泣きながら呼ぶが返事が聞こえない。  しばらくしたら立って動ける様になったので、ハナを追いかけようと歩き出すと「ただいま〜!」とハナは物凄く元気になって帰ってきた。  「ハナちゃ〜ん!心配したよ〜!」と思わず抱きしめそうになるが神様との誓約があるのでグッと堪える。  「ごめんルル兄!遅くなっちゃった!そんな事より朗報!」  ハナは嬉しそうにルルの前で踊りながら話す。  「朗報?」  「そう。朗報!さっき謎の引きずった怖い音はウミガメ先生が歩いてる音だったんだ!」  「ウミガメさんか〜そりゃ引きずった音になるね。うんうん。」  「ウミガメ先生は、私が初めてこのどうぶつ局に来た時の教育係でね、ウミガメ先生は海の事とどうぶつ局の事はほとんど知っている動物なんだ。」  「海の事!?」  「そう!それでね?聞いてみたの。今回の課題『人魚』について!」
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