ウワサをするとなんとやら

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ウワサをするとなんとやら

 「ああ〜しまった!もっと遠回しに言ったら良かった。つい興奮しちまった。アイツすっごい耳が良いんだよな……もうすぐアイツが来ちまう。くそっアタイとしたことが。」  急にジュゴンが頭を抱えて、岩を叩き(うな)り始める。  「呼んだ?」  「うわあああああ!!!!」  「きゃー!!」    「出たー!!」  それはルルとハナが(まばた)きをした時だった。  ジュゴンのすぐ横に大量のワカメを頭に被った白イルカが海面から顔を出して、バァ!と舌をだしてルルとハナを(おどろ)かせる。  大量にワカメを被った白イルカは、ルルとハナがが子供の頃、人間の姉が見せてくれた妖怪の海坊主(うみぼうず)のようだった。臆病(おくびょう)なルルとハナにとってその姿は恐怖でしかない。  ハナは号泣しながら「こっちに来ないで!」と怒り、ルルは号泣しながら腰を抜かしていて2匹は完全にパニック状態。ジュゴンは未だに頭を抱えて唸りを上げている。  まさに阿鼻叫喚(あびきょうかん)。  ちょっと(おどろ)かすだけのつもりが、こんな事になるなんて思ってもみなかった白イルカ。  やり過ぎたと思い、泣き止んでもらおうと海底から花を沢山()んで来て海面に飾り、ルルとハナの周りでドルフィンジャンプを必死に披露(ひろう)する。    「ほら!怖くなーい!怖くなーい!ね?ほら!見て〜この美しいドルフィンジャーンプ!ほら、もう一度行くよ〜?ドルフィンジャーンプ!」  しかし、ルルとハナにとって海坊主(うみぼうず)が近くで暴れているようにしか思えず、白イルカが頑張れば頑張るほど恐怖が増していく。  「ああ、泣かないで〜なかないでよ〜。。ジュゴンちゃん助けて〜。うわ〜ん。」  「じゃあ、まずジッとしなさい!鬱陶(うっとう)しい。そのドルフィンジャンプ、余計(よけい)に2匹を怖がらせてるのよ!」  「うう。ごめんなさい。」  「そこの2匹!取材をしに来たのではなかったのかい?いい加減(かげん)泣くのは()めな。(おどろ)かせたお()びに取材に協力するってよ。」  「取材?なになに?何の取材してたの?」    「お(だま)り!」  「はひ!」  ジュゴンが白イルカを(だま)らせて、最初に正気(しょうき)に戻ったのはルルの方だった。  「しゅ、取材、協力……?ジュゴンさん。こ、のお方は一体。」  ルルは腰を抜かしたままやっとの思いで声に出した。  「やっと落ち着いたかい。コイツは【白イルカ】だよ。さっき話してた腐れ縁の人魚と言われている哺乳類さ。」  ほら、もう一度謝りな。と白イルカを強めに小突(こづ)く。  「うっ。あの、さっきは驚かせてごめんなさい。あそこまで驚かせるつもりは無かったんだ。ボクのせいで2匹を怖がらせてしまって本当にごめんなさい。」  「いえ、僕の方こそ……。怖がりすぎてすみません。ボク達、どうぶつの神様の指令で『人魚の由来』について取材をしに来た者です。取材を受けて下さった方にはもれなく、『死後、快適な天界ライフを送れる』と言うおぷしょんがついています。取材に協力して頂けますか?」  「もちろんだよ!怖がらせたお詫びに何でもするよ!」  「良かった!ありがとうございます。では早速、こちらは取材するにあたっての契約書です。念の為一度、目を通して頂ければ嬉しいです。契約書は、少しだけ血液を付着させると契約書は飴に変化するので、その飴を飲み込むと契約完了です!」  ルルは、ハム美に貰った契約書を白イルカの前に出す。  白イルカは、さっと契約書に目を通すと、すぐに契約書を飴に変化させて飲み込んだ。  「甘くて美味しい!ボク、こんな美味しい食べ物は初めてだよ!聞きたい事あったら何でも聞いてね!」  ルルはそのあまりの速さに本当に読んだのだろうか、お詫びと言えど悩みもせず契約してしまうなんて。と少し白イルカが心配になった。  「ありがとうございます。改めまして僕は、ルルです。よろしくお願いします。」  契約書の飴を飲み込んだのを見て、害のない動物と判断したハナもようやく正気を取り戻した。  「よろしくお願いします。私はハナです。お見苦しい所をお見せしてしまいすみません。」  「よろしくね!謝るのはボクの方だよハナさん、怖がらせてごめんね……。あ、そうだ!綺麗な石は見た事ある?ボク泳ぐのだーい好きでね、時々人間がいる岸の方まで泳ぐんだ。それでね、それでね、そこまで泳ぐと沢山綺麗な石が落ちててね。ボクその石を集めるのが趣味なんだ!ルルとハナにもあげる!ちょっと待っててね!」  白イルカは楽しそうに一気に話終えると、ルルとハナが返事をする前に凄い速さで何処かに行ってしまった。      
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