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Hurry up!
Hurry up!
ルルとハナは、キラキラの石の他の楽しみ方、バブルリングの作り方などを白イルカに教わって、存分に海の生活の娯楽を満喫していた。
いきなり、ルル大声をあげて慌てふためいた。
「しまったぁぁあ!ちょ、今何時!?」
「うわ!!ビックリした!なになにー?いきなりどうしたのよルル兄ぃ。」
「どうしたのよじゃないよ!社長から明け方までに戻って来る様にって言われてたじゃないか。社長の事だし……もし明け方までに戻らなかったら、僕達どうなるか分からないよ!」
尻尾を後脚で挟んで、肉球で目を覆ってブルブルと震え出した。
「社長って、確か神様だろう?そんなにおっかない方なのかい?」
「あの神様は、自分が面白ければそれで良いって方なんだ。基本的には優しくフレンドリーに接してくれるけれど、気に入らない事があればすぐに消したり、違う生き物に変えたり、ラジオの新しい企画の案を考えるだけ考えて丸投げしてきたり……」
「消すって!?そ、それってもしかして存在を?」
「う、うん。これはラジオ局の昔から言い伝えと言うか噂だし、本当かどうか分からないから内緒なんだけど、人間が生まれていない大昔に物凄く大きい生き物しか居なかった時代があったらしいんだけど……」
「あ、私それ聞いた事あるルル兄ぃ。確か……新しい生き物を作りたくなっちゃったって言う軽い気持ちから、大地の神様と天気の神様と結託して一気にその大きい生き物を減らして、新しい生き物を作ったって。」
「そうそう、その新しい生き物が、僕達今の生き物の先祖って聞いたよ。」
「ヒェッ。ごほっごほっ。ごめん。ちょっと空気吸ってくる。」
驚いて空気を出し過ぎた白イルカは深呼吸して戻ってきた。
「ただいま。月の位置を確認してきたけど、あと2時間くらいで夜が明けそうだったよ。そういえば取材って大丈夫そうなの?」
「そうなのよ。ジュゴンさんが人魚説心を痛めているから、このまま取材をしてラジオで流しても良いのかどうか悩んでで……ね?ルル兄ぃ。」
「そうなんだよ。でも神様の命令だしなーって感じで、ちょっと難航してる。なんか良い案ないかな?」
「そうだね。実はボク、ボクの可愛いジュゴンちゃんが傷付いてるのが嫌で、海の散策や宝探しを始めたんだ。」
(ボクの可愛いジュゴンちゃん……)
ハナは、恋愛レーダーが引っ掛かりテンションが爆上がりしたが我慢した。
「それにボクは元々この地域の動物じゃなくて、もっと他の所を群れで転々と移動する種族だったんだ。でも迷子になってしまって死にかけてた時、ジュゴンちゃんがボクを一生懸命に看病して助けてくれて死なずに済んだ。そのお礼をしたくてしばらく一緒居たんだけど、いつの間にか、優しくて可愛いジュゴンちゃんにどんどん惹かれて好きになっちゃんだ。」
「それで今も一緒にいるんですね。」
ハナは嬉々として相槌をうつ。
「それで最初は仲が良かったんだけど、ジュゴンより白イルカの方が人魚っぽいって噂が流れて来て、今は無いんだけど他の生き物達がジュゴンちゃんを冷やかしに来て心が病んじゃったんだ。ボクはまたジュゴンちゃんに笑顔になって欲して、また仲良くなりたくて明るく接してるんだけど、やり過ぎたのかウザがられる様になっちゃって。」
「確かに大分ウザがられて…ぐっ」
ハナはルルに頭突きをした。
「こら!ルル兄ぃ…しっ!」
「でも最近、ある情報を見つけたんだ!いつもの様に散策をしていると、何処からか漂流してきた本があって、その本には色んな魚が人魚に変身している絵が描いてあったんだよ。オットセイ、アシカ、クジラ、ウツボやタコ、何とこんな小さいエビ!」
「確かタコって足が8本の生き物だったわよね。人魚の想像がつかない!」
「そうなんだよ!尾ひれが付いていようがいまいが、その生き物が人魚って思えばそれはもう人魚なんだと思ったよ。今手元にないけど、その本に描かれていた人魚達は本当に綺麗で、美しかった。誰になんと言われようが、その生き物の本来の美しさは変わらないし、堂々とする事で魅力が更に上がって見える。でも……」
「でも?」
ハナは聞き返す。
「コレを伝えようとしたんだけど見ての通りボクはジュゴンちゃんにウザがられいてるでしょ?だから、どうしても分かって貰うのが難しくて……。ボクの大好きな優しくて、可愛いジュゴンちゃんは昔から変わらない寧ろ大きくなる一方だ。って」
白イルカの苦しそうな様子に、ルルとハナも胸が苦しくなった。同時に、この2匹のために何が出来ないかと考えた。
「ルル兄、もう人魚説の真偽なんてどうでも良い気がする。何とかできないかな。」
「そうだね。僕もそう思う。白イルカさんのこの熱い願いも叶えたいし、ジュゴンさんがもっと幸せになれる様にしたい、もしかしたら同じ想いのをしている生き物もいるかもしれないし。白イルカさんの言ってた本、神様に言ったら出してくれるかもしれないし。」
「ありがとうルル兄。よし、白イルカさん!私達もその想いを伝えるお手伝いをさせて欲しい。白イルカさんのその気づきを私達が預かっても良い?」
「手伝ってくれるの!?ありがとう。ボクは君達を出会えて本当に幸せだ!どうかよろしくお願いします。ごめんね、急にしんみりとした話をして。でも本当にありがとう!」
「任せて!できる限りの事をさせてもらうよ。素敵なお土産もいっぱい貰ったしね!」
「あ……!!もう帰らなきゃ!空が明るくなり始めてる!じゃあもう行くね、バイバイ!」
「バイバイ!ルル!ハナ!」
白イルカはルルとハナが好きな!バブルリングを沢山作って別れの挨拶をする。
この世界に来た時のゲートは、案外近かったみたいで滑り込む様に入った途端、直ぐに閉じてしまった。
「うっわ。凄いギリギリだったね。あと少し遅れてたら……うぅ。」
ルルは、そう言うと身震いをした。
「よし、あとはこの一本道をひたすら歩いて帰るだけだね!もう夜が明けるから報告や準備は明日早くに出勤してからで、お土産は私が一旦預かっておくね!」
「ありがとう、今日は色々あったね。しっかり休んで明日の放送に備えよう!」
「そうしよう!このゲートもいつまで存在するか分からないから、早く帰りましょ!ヨーイ、ドン!競走だ〜!」
「ちょ、いきなりはずるいよー!」
「……ホッホー……おフタリさん。通訳だから空気の様に気にしないで取材を進めてと言ったけど、本当にボクのコトを忘れてイナイかい?なんだかちょっぴり寂しくなったよ?ボクの通訳が有能スギタノカ?ホッホッホ……。さっ、帰ったら沢山食べて
大好きなヌイグルミを抱いて寝よう。ホホ。」
ゲートを抜けた後、ルルとハナに存在を思い出して貰えたとか、そうでなかったとか……。
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