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ルル帰還
「……!……!!」
ん~?なんか騒がしいな。
「……ル!……きて!!」
ん~、何~。夜は大変だったからちょっとだけゆっくりさせてよ。
「ルル!起きて……ズズッ……」
え、泣いてるの!?誰が泣いてるの?泣かないでぇ。
ルルは、涙を舐めて元気づけてあげようとした。
あれ?おかしいな。目が開かない。あれ、手足もうまく動かない。耳は聞えるのに。
えいっ!開け!!動け!
はぁ、はぁ、はぁ。ど、どうしよう息も苦しくなってきた。
「ルル!!まだ逝かんといてや、死なんでや……息してや!ルル!」
え、えええ。誰が死ぬって?僕?い、いやいやいや、まだ死ぬ気ないって!
はぁ、はぁ、はぁ苦しい。呼吸してなかったなんて。
ちょっとちょっと神様、約束が違うじゃないか。何が「朝方には戻ってきてね~!」だ。ギリギリだったけど暗いうちに帰ってきたじゃないか!
不安を超えて神様に怒りを覚えるルル。本当に明るくなった「朝方」に帰ってきていたら体は既に死んでて戻ってこれなかったかもしれない。
不安がルルの背筋を凍らせた。
「ルル……ゆっくり、ズズッ……ゆっくりでいいから、呼吸して……」
吸ってぇ……吐いてぇ……吸ってぇ……。ルルは深く呼吸をして心を落ち着かせる。
ドッドッドッドッドッドッ
落ち着くと自分の心臓の音が聴こえてくる。大丈夫。僕はまだ生きてる。
ドット……ドット……ドット……ドット……ドット……
あ、僕とは違う心臓のが聴こえてきた。誰かが抱っこしてくれてるのかな?ふふ、あったかいな……。大丈夫、大丈夫って言われているみたい。頑張らなきゃ。
しばらくすると、手足に体温と力が戻り目も開くようになってきた。周りには涙でぐしゃぐしゃになった人間の家族達。
「もう、心配したでルル……ズズ。疲れたやろ?綺麗な水あるから飲み。」
ごめん。ごめんみんな、心配させちゃって。大丈夫、まだ頑張るからね。
ルルは、皆の顔に伝っている水をなめとる。
「ぷはっ……!ちゃうちゃう!この水じゃない。ここに綺麗な水あるって!ぷはっ!」
大丈夫と安心させるように|尻尾≪しっぽ≫を振って姉が言ってた水を飲み、ちょっと残っているカリカリのご飯を食べる。すると、皆の顔に笑顔が戻った。
「ルル……。まだ死なんとってな。せめて、せめてやでルル、家族全員そろってるときにしてね。寂しいからな。勝手なことを言うてごめんやで。まだ生きてほしいねん。戻ってきてくれてありがとうな。」
姉はちょっと苦しいぐらいにルルを抱きしめる。
人間の家族の言葉は15年ちょっと生きてきて、大体はニュアンスでわかるようになったけど完全には分らない。
【まだ死なないで】【みんなが居る時に】と、【めっちゃ心配した】というのを感じた。だからルルはちょっと苦しいけど大人しく抱きしめられる。
姉が【みんな居る時に】って言うのは、ハナちゃんの時の事を言っているのかもしれない。
ハナちゃんが亡くなったのは、今からもう5年くらいになるのかな?白髪と睡眠時間がすごく増えて、亡くなる直前大好きなおやつ、ご飯も体が受けつけなくなったのに下痢が続き、最後は寒くなったみたいでブルブル震えながら亡くなった。
ハナちゃんが亡くなった時、姉達はガッコウという所に行ってて居なかった。
でも、その日から冬休みっていうずっと家にいててくれる時期に入ったらしくて、いつもより早く帰ってきてくれたんだ。
それでも、ハナちゃんが生きている時に会うことは叶わなかった。
一番上の姉は、知らせを聞いて学校で気絶したみたいで結局いつもと同じ時間に帰ってきたから、よけいに悔しさと悲しさが残ったみたい。
ハナちゃんが亡くなってから不思議と僕の体は一気に老化が早くなったみたいで、白髪と睡眠時間がすごく増えて足腰も弱くなり歩く時ふらふらしてしまう。
嗅覚と視覚も弱くなっていつものご飯の場所を探すのもやっとって感じ、もしかしたら僕も先は短いのかもしれない。
そんなことを考えるようになってた昨年の夏。
ハナちゃんはしれっと僕の前に現れた。正確に言えば帰ってきた。
動物世界ににも人間と同じように【お盆】というのがあるみたいで、その期間だけ生きてた頃に好きだった場所に帰れるらしい。
ちなみに、なぜすぐに帰って来れなかったというと、戻った時にやって良いこと悪いことの勉強、その他いろいろ修行することがあったみたいで遅くなったらしい。
そして今年の夏少し前、神様の気まぐれでお盆の間、【どうぶつラジオ】という動物による動物たちの為の動物のラジオを始める事が決まり、そのラジオパーソナリティとして私と一緒にやってくれないか。とハナちゃんが再び帰ってきた。
「もし、ラジオパーソナリティになってくれたら何でも一つ願いを叶える。」
そんな条件が付いていた。また少しでもハナちゃんといられるならと、僕は二つ返事で答えて契約の飴玉を飲み込んだ。
すると、急激な眠気に襲われる。目が回り、どんどん不自然に体の力が抜けていく感覚に、ルルは怖くなったが容赦なく意識は奪われていった。
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