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ジェリーとビーンズがたずねていったとき、ペンネおじさんは部屋のすみで、ぐったりと長椅子にすわっていた。
「ああ、おはよう、可愛いふたご。アラビアータは元気かね」
そのようすにおどろいたジェリーが「おじさん、気分でもわるいの?」と駆けよる。
「気分? ああ、朝から警察におしかけられて、最悪さ。朝食をとる気にもならなかったよ」
ジェリーの赤毛をなでながら、おじさんはぼやいた。
「警察?」栗色の髪の毛のさきを指でくるくるいじりながら、ビーンズもおじさんの足もとへやってくる。
「いま、警察っていったの、おじさん?」
「イヌどもめ!」ペンネおじさんが突然さけんだので、ふたりとも思わず飛びのいた。おじさんは肩をいからせ、自分のひざを両手でぴしゃりとたたく。
「植木鉢に鼻をつっこんで荒らしていきやがった。庭のスターチスもだ。せっかくきれいに咲かせたのに!」
「警察がペンネおじさんになんの用だろう」
ジェリーがビーンズに耳うちしたそのとき、玄関の呼び鈴が鳴った。
「新聞ですよお」というのんびりした声に、ジェリーが走っていき、くつ箱に隠してあるクッキー缶からコインをとりだした。
コインとひきかえに配達員から受けとった新聞をみて、ジェリーは目をまるくする。
「怪盗ラザーニャだって?」
戻ってきたジェリーの隣に立ち、新聞の一面を横からのぞきこんだビーンズも、大きく口をあけてしまう。
「アンタレスを盗むって?」
ふたごはそっくりな顔をみあわせて、声をそろえていった。
「パエリアおばさんのたいせつなアンタレスを!」
「まったくばかげたはなしだよ」
ペンネおじさんが、先ほどとは別人のように力のない声でつぶやく。
「きのう警察に予告状が届いたそうだ。全力で警備をしてくれるそうだが、なんたって、相手は怪盗ラザーニャだからね」
「どんなに厳重に守られた宝だって盗みだす!」
「必ず予告状をだし、必ずそのとおり現れる!」
「その顔をみたものさえ、いまだ誰もいない!」
「謎と闇につつまれた凄腕怪盗、ラザーニャ!」
ジェリーとビーンズが興奮して口ぐちにいうと、おじさんは「そう、そのラザーニャ」と肩を落とした。
「きょうから七夕までの三日間、あの警察犬どもが毎日うちの花壇をめちゃくちゃにしていくのかと思うと、わたしは胃がよじれそうだよ」
「アンタレスはいまどこにあるの、おじさん?」
「変わっていないよ。いつも通りの場所において、あやしいことが起きないかみはるんだとさ」
ビーンズの質問に答えながら、ペンネおじさんはよっこいせと立ちあがった。
「ふたりとも、プラネタリウムをみにきたんだろう? 愚痴をきかせてわるかったよ。おわびに特等席をあけてあげよう」
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