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「テオ」
ダエラは家に帰り、息子の部屋の扉をノックする。
月明かりを恐れるテオも、優しい星屑の光にならば、心を開いてくれるのではないかと期待して。
テオはそっとドアを開けて、片目だけ覗かせ、母親を見る。
そのドアの細い隙間に、ダエラは光を放つ星屑を注ぎ込んだ。
「何をするんだ!」
テオが恐れ、母親を嫌悪して叫ぶ。
入り込んだ光たちを、テオは全部、塵屑のように扱い、掃き出してしまった。
ダエラはまた、悲しみに沈む。
テオは母親に言葉一つかけずに、再び暗闇の部屋へ戻り、ドアを閉める。
彼はそのままベッドに戻り、毛布にくるまって、光を恐れ、嫌悪した。
彼の周りに、静寂と暗闇とが訪れた。
しかしそれは一瞬の出来事で、母親の嘆きが再び少年の静寂を乱す。
あきらめきった顔の少年には、嘆きを消す力も、明るさに身を置く力もない。
母親の嘆きが、心を超えて伝わる。
それに心を閉ざすように、彼は耳をも塞いだ。
だが嘆きの音はやまない。
決して、彼の心から嘆きと憎しみの残骸が去ることはない。
テオは母を憎み始めている自分を知っていた。
だが、どうすることもできないでいる。
暗闇と嘆きとに包まれて、それを子守唄のように、少年は目を閉じ、自らは沈黙してしまう。
夜の静寂に恋い焦がれるかのように。
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