1-1 五胡十六国時代を知ろう!

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1-1 五胡十六国時代を知ろう!

「エブリスタ」読者諸氏よ、ごきげんよう。 我は崔浩(さいこう)と申す。 今回作者が我に任じたは、 五胡(ごこ)十六国(じゅうろっこく)時代の流れを追う、 と言うものである。 なにぶんこの時代は、 一言で申さばどマイナーである。 過去の作者の時代認識を引き合いに出せば、 中国史など(かん)の次に三國志が来て、 ……遣隋使(けんずいし)? であった。 そもそも、日本人でまともに 中国史の時代推移を 把握している者の方が少ない。 この点は重に弁えねばならぬ。 そしてここは、中国史をネタにした小説を 読者諸氏に向け提示するに当たり、 途方もない障壁となる。 よって、この障壁を 少しでも低く出来れば、と期した。 歴史小説に於いて先史、 及び後史を知っていると、 楽しみ方がまるで違う。 いやしくも歴史小説を 物しようというのであれば、 その楽しみ方を提供することも、 また一つの手立てではないか、 と考えている。 この際、あまり研究に資するがごとき 語りをしても仕方あるまい、と考えておる。 極力エンターテインメントとしての 文態になるよう心掛ける次第である。 さて、五胡十六国時代、である。 大雑把な西暦で言うと 300 年から 450 年。 意味は五つの蛮族が 十六の国を建てたから、と言うことだが、 これがまた、蛮族の数は五ではきかぬし 国の数も普通に二十は越えるしで、 だいぶザルな命名となっている。 この名をあえて超訳せば 「漢族たちが蛮族どもに  フルボッコにされた時代」 となろうか。 この時代、いわゆる五胡 (匈奴(きょうど)鮮卑(せんぴ)(てい)(けつ)(きょう)) には、抜きん出た王が幾人か現れた。 正味のところ、この王らが所属していた 部族をして「五胡」と呼んでいる、 と見做した方が早い。 なので下手に時系列を追うよりも、 まずこの王たちの存在を時代の柱として 立ててしまうのが理解の助けとなろう。 以下に一挙に王たちの名を挙げる。 暗記の強要は二十一世紀式とは 到底言いがたいが、 この点については諦めよ。 メインストリーム (数字は覇権を握った期間)  司馬炎(しばえん)西晋(せいしん)(かん)族)266-290  劉淵(りゅうえん)(そう)前趙(ぜんちょう)・匈奴)304-318  石勒(せきろく)()後趙(こうちょう)・羯)318-349  苻堅(ふけん)前秦(ぜんしん)・氐)357-385  姚萇(ようちょう)(こう)後秦(こうしん)・羌)386-405  拓跋珪(たくばつけい)()(とう)(北魏・鮮卑)405-452 サブストリーム  慕容廆(ぼようかい)(こう)(すい)(えん)・鮮卑)337-370、383-395  王導(おうどう)祖逖(そてき)桓温(かんおん)謝安(しゃあん)劉裕(りゅうゆう)東晋(とうしん)・漢族)311-420 以上が最優先で把握すべき ビッグネームである。 流れはほぼメインストリームを追うことで 大丈夫なのだが、 石虎と苻堅の間に若干の開きがあること、 また物語にはライバルがいなければ 始まらぬこと、を踏まえ、 サブストリームの諸人物を配した。 なお五胡十六国クラスタには、 「燕」の書き方が ものすごく雑なことを理由に 刺されても仕方がない、と思っている。 そして、以上の主要人物とは別に タイムスタンプを設置しよう。 ・280年 西晋の天下統一 ・310年 八王の乱~永嘉(えいか)の乱 ・328年 両趙洛陽(らくよう)決戦 ・350年 冉魏(ぜんぎ)建国 ・369年 枋頭(ほうとう)の戦い ・383年 淝水(ひすい)の戦い ・405年 柴壁(さいへき)の戦い ・420年 晋滅亡 ・442年 北魏華北統一 以上が五胡十六国時代中に起きた 大きなイベントである。 各ビッグネームたちが、 各イベントにどのように関わってきたか、 と追っていただくのがよかろう。 それにしても350年の冉魏には 違和感しかないな。 これについてはあらかじめ、 解説をしておこう。 この時代の流れで、 最も手ひどいちゃぶ台返しを決めた国だ。 ちゃぶ台を返すだけ返し、とっとと滅んだ。 この国のせいで五胡十六国時代の流れが 無駄に複雑になった印象がある。 そういう意味で許せぬ国である。 以上を踏まえ、それでは次回更新時以降、 楽しい楽しい五胡十六国時代の あらましをお送りいたそう。 では、また次部。
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