雨降り花火

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姿見の前に立って、私は体を捻りながら何度も自分の姿を確認する。 帯は歪んでない。 裾は綺麗に閉じている。 おだんごにした髪には紫陽花のモチーフの簪。 「よしっ」 小さく気合いを入れて、私は巾着片手に家を出た。 カランコロンと下駄が鳴るたび私の胸も弾む。と同時に、緊張も高まってくる。 今日は街の花火大会。 同級生のハルくんと見に行くのだ。 ハルくんとは仲がいい。 でもハルくんは誰とでも仲がいいから、私だけを特別視しているわけじゃない。 ライバルは多い……と思う。 そう、私はずっとハルくんに片想いをしている。 幼稚園のときから、ずっとだよ。 それなのに意気地無しな私は、毎年花火大会にハルくんを誘いたいと思いながらも今までできないでいた。 小学生のときは家族で見に行ったけど。 中学生になったら友達とか彼氏とかと行くじゃない? 中三の夏、私はとうとうハルくんにお誘いをかけることに成功した。 高校は離ればなれになっちゃうから最後のチャンス。 そう気合いを入れたのが功を奏したのか、ハルくんはあっさりと「いいよー」と承諾してくれた。
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